日本財団 図書館


産業廃棄物等に係る消防対策について

自治省消防庁消防課 高橋規夫

 

産業廃棄物等の火災については、表に示すとおり、ここ数年小規模なものを含め年間五〇〇件前後が発生しており、中には鎮火まで相当の時間を要している例も見受けられます。最近では、平成九年一一月に岐阜県で大量に集積・保管されていた廃タイヤ、廃プラスチック等が数日間にわたり延焼するという火災が発生しました。

一般に、産業廃棄物等が集積・保管されている場所は、道路事情や水利事情が悪いことに加え、山積みとなって集積・保管されているために有効な注水が得にくい等、消火活動に困難を伴う場合が少なくありません。

また、火災に伴って大量に発生する黒煙による大気汚染や有害物質を含んだ消火水等が河川、水田等に流入することによる水質への影響等、周辺環境に配意した消防活動が必要となる場合も想定されるところです。

したがって、各消防機関においては、普段から廃棄物担当部局等との密接な連携を図りつつ、警防調査等の機会を捉え、産業廃棄物等の実態把握や火災予防措置をはじめとする次のような対策を講じておく必要があります。

 

一 産業廃棄物等保管場所の実態把握等

 

産業廃棄物等を大量に集積・保管等している場所(以下「保管場所」という。)で、火災が発生した場合に消火が困難となることが予想され、かつ、火災予防のために特に必要があると思われるものについて、廃棄物担当部局等との連携を密にし、その所在、廃棄物の種類及び量、関係者の有無、管理方法、消防活動上の障害等の情報を入手する等によりその実態を把握する。

 

二 警防計画の策定

 

火災発生時における迅速・的確な対応を図るため、前記一で把握した内容に基づき、事前に保管場所ごとの警防計画を策定する。

この場合、必要に応じ河川、水田等への消火水の流入防止対策等についても定めておく。

 

三 重機を所有する民間企業との協力体制の確保

 

産業廃棄物等の火災においては、重機を活用した消火活動が有効となる場合が多いことから、重機を所有する民間企業との協定の締結等、協力体制の確保について十分に配意する。

 

四 その他必要な事項

 

(一) 産業廃棄物等の火災にあたっては、状況に応じ、近隣市町村の応援を求める等、必要な消防力の早期集結に十分に配意する。

(二) 消火にあたり、水質汚染等周辺環境への影響が懸念される場合には、都道府県消防主管課の協力を求める等、速やかに関係部局に連絡するとともに相互に連携を図り、適切な消防活動に努める。

(三) 再生利用を目的として大量に集積・保管された廃車については、資源として産業廃棄物に該当しない場合もあるが、平成九年中に富山県、大分県で相次いで大規模な火災が発生したところであり、これら廃車の集積・保管場所についても、前記に準じた対策を講じる。

なお、これらの対策については、消防機関のみでは対応が困難なことから、消防庁としては、厚生省との間で事前に十分な調整を図ったところであり、廃棄物担当部局と消防機関との連携の強化等について、平成一〇年二月九日付け衛産第五号厚生省生活衛生局水道環境部産業廃棄物対策室長名をもって各都道府県・政令市産業廃棄物主管部(局)長あて通知されたところです。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION