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六 爆裂による消火活動等への影響

 

今回の火災実験では、大音響とともに激しく爆裂を起こし、かなりの勢いで破片が吹き飛ぶため、はしご車等が直近に部署して活動する場合においては、飛び散る破片によって車両や隊員に危害の及ぶ恐れが感じられます。

さらに、爆裂を起こす時の爆裂音は、消火活動に当たる消防隊員に対して測り知れない程大きな心理的な影響を与えます。

また、こうした消火活動上の影響の他、爆裂によって生じた壁体の開口部が、火災の延焼拡大する大きな要因となる危険性もあります。

事実、今回の火災実験でも、爆裂によって生じた開口部から激しく炎が噴き出し、上階や隣室側に相当炎が延びており、延焼する危険性が極めて高くなると考えられます。

したがって、火災熱によって爆裂が発生した場合、破片の飛散による危害に加えて、消防隊員の心理的な影響と延焼危険の増大という消火活動上の大きな問題も生じてきます。

そして、火災熱で熱せられる間中爆裂を繰り返すため、消火活動の妨げになります。

 

おわりに

 

コンクリートや石綿セメント板が加熱によって爆裂することは相当以前から知られていましたが、けい酸カルシウム板については明確に記載されたものがありませんでした。

しかし、このけい酸カルシウム板も、正確には石綿セメントけい酸カルシウム板と呼ばれるものであり、石綿セメント板と極めて類似する性状であることから条件によっては爆裂を起こすものと考えられました。

そして今回の実験では、外装に使用されていた石綿セメントけい酸カルシウム板が大音響とともに爆裂を起こし、激しく破片が飛び散る状況を目撃、この爆裂が消火活動や延焼拡大に与える影響の大きさを痛感しました。

このような状況から、石綿セメントけい酸カルシウム板を外装材として使用する部分の制限や表面部に爆裂防止処置を施す等、徹底した爆裂防止対策を取る必要があります。

また、消火活動においても、コンクリート等と同様に爆裂が発生するという前提で車両の部署位置や活動場所、活動内容等を決定する必要があると思われます。

 

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写真1 爆裂現象の発生する直前の室内の燃焼状況

 

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写真2 爆裂現象の発生する直前の外観の状況

 

 

 

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