まえがき
小学校学習指導要領「体育」では、自ら運動する意欲を培い、生涯にわたって積極的に運動に親しむ資質や能力を育成するとともに、基盤的な体力を高めることを重視する。このため、児童の発達段階に応じて、運動を一層選択して履修できるようにすることや、体力の向上を図る上で内容を重点化するなどの改善を図る。また、児童の体力等の現状を踏まえ、心と体をより一体としてとらえる観点から、自分の体に気付き、体調を整えるような内容を盛り込むことが新たに示されました。また、地域や学校の実態に応じて多様な運動も指導することができるようにする、としています。したがって、小学校体育授業のなかで空手道を学習させることも可能になったわけです。
現在、少子高齢社会はスポーツ指導者の高齢化を招き、指導者の不足も深刻な状況となっており、子供たちのスポーツ選択の機会を著しく狭いものにしております。このことは、これから盛り上げていかなければならない生涯スポーツ実践の芽を摘みかねないのが実情です。
文部大臣認定の「地域スポーツ指導者」の資格取得状況において、非常に多くの空手道指導者が、地域スポーツ指導者としての認定を受けております。このような現状の中で、今後文部省が公認する指導者が小学校の体育授業の中で空手道を指導することも考えられます。また、小学校の体育授業で不足する部分を、地域スポーツ指導によって補う必要性がかならずでてくると予想されます。
本書は、以上のような状況に対応して、学習指導要領の趣旨に基づき、作成委員の審議と、文部省の学習指導要領に準拠して作成致しました。空手道の特性と内容の考え方、指導計画と学習指導法、技能指導の要点などをまとめ、児童期の空手道指導をより効果的にするための参考に供することとしたものです。
小学校体育授業指導・地域スポーツ指導にあたる空手道指導者においては、本書を活用され、空手道指導について一層の理解を深められるとともに、創意工夫を生かして充実した空手道教育に当たられることを希望致します。
財団法人 全日本空手道連盟
会長 笹川尭