第2章 土砂災害に対する警戒避難対策のあり方
1. 土砂災害に対する警戒避難活動上の問題
第1章の表1.1に示したように、豪雨災害時の人的被害は、近年では土砂災害によるものが圧倒的に多くなっています。そのため、豪雨災害対策は土砂災害から人命を守るための警戒避難対策(人命を守るための警戒活動と避難の勧告・指示等の伝達活動、住民の避難を効果的に行うための対策)を中心に考える必要があります。
ところで、過去の豪雨災害時に防災行政機関・住民の対応にみられた警戒避難活動上の主たる問題を災害事象の進展に沿って模式的に示すと表2.1のようになります。
表からは、各種の問題により災害事象の進展度合いに比し、「災害対策本部の設置」、「動員開始」、「避難準備の呼掛け」、「避難の勧告・指示」、「住民の避難」等の活動が遅れる傾向にあり、結果として人命の損失危険を増大させていることが読み取れます。
この表に示された土砂災害に対する警戒避難活動上の問題は、警戒避難活動の3つの過程(図2.1参照)の問題として次のように集約できます。
1] 「土砂災害危険の接近予測と避難の勧告・指示等の意思決定」過程の問題
市町村等による土砂災害危険の接近の把握が遅れ、体制確立や避難の勧告・指示等の判断の遅延や欠如があること(問題1)
2] 「住民への情報伝達」過程の問題
土砂災害危険の接近状況(情報)や避難の勧告・指示等の意思決定が市町村等から危険箇所住民等に即座に伝達されないこと(問題2)
3] 「住民の警戒と避難」過程の問題
市町村等からの土砂災害危険の接近状況や避難の勧告・指示等の情報を受けた住民等が適切な警戒・避難行動をとらない、あるいは、とれないこと(問題3)
これらの問題が一つでもあると、土砂災害から人命を守るのはきわめて困難な状況に置かれることになります。