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また、水田や水辺の生き物であるカエルやトンボ、ホタルなども、農薬の使用と河川の汚染、開発などによって次々と姿を消しています。生き物にとってはその生息場所、生息環境が安定して確保されていることが、最も重要な条件です。私たちの「里山管理」の目的の一つには、“身近な生き物”を守ることです。それは彼らの数千年にわたる棲息環境であった、里山を保全することが重要であるとの認識によるものです。

同様に、オオムラサキやカブトムシ、ホタルなどの昆虫や、その他の小さな生き物たちについても、人と自然との歴史的なかかわりの結果、しかるべくしてその生息環境に適応しているものと言えます。日本の生き物は、水田や溜池、河川そして集落近くの雑木林(里山)に多く棲息しているのが特徴であり、これらの農村的な自然の要素をセットとして保全することが、身近な自然の生態系を保全する上で最も重要なことです。

 

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ニホンジカは里山動物の代表種なのだが?

3面張りでイタチも暮らしにくくなりました

 

II. 昔と今、そしてこれからの里山

 

里山に人の手が入らなければ、より自然な環境へと戻っていくのだから結構なことではないか…という考え方もあります。

しかし、先の章で述べたように日本の農耕文化とともにあった里山が多種多様な生き物にとってなくてはならない環境であり私たち人間にとってかけがえのない身近な自然であるという厳然とした事実があります。

 

 

 

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