新聞でみる 公的介護保険
現金給付と「家族ヘルパー」
介護保険の立案の過程の議論で否定された「現金給付」が、姿を変えて近頃また俎上にのぼろうとしている。ヘルパー確保等のサービス提供にめどがたたない自治体が、2000年4月の施行が近づくにつれて、その代替案として出してきたという面が強いように見受けられる。その声に押されて98年10月、"厚生省はヘルパー自身の家族介護を介護保険の対象にすることについて条件付で検討をはじめた"と各紙は一斉に報じ、現在、諸説展開されているのだが・・・。
産経新聞 2000年4月に供給できるサービスは必要なサービスの半分程度で不足分は家族に頼らざるを得ないという現状(特に過疎地)から考えると評価できる。(98.10.19付)
西日本新聞 ホームヘルパー不足解消、サービスの選択の幅が広がるという利点の反面家族で者なくてはならない風潮を招く恐れがあるが、日本の家族制度や慣習、住宅事情を考慮の上で家族ヘルパーも育てることが必要。(98.10.27付)
高知新聞 家族介護給付の実施で旧来の家族任せの介護に逆戻りしてはならないが、ホームヘルパー数が絶対的に不足している現状では、補完措置としての意義は大きい。ただ、厚生省の条件は厳しすぎて実効が上がるか疑問。(98.10.18付)
日経新聞 家族介護とプロ介護を並立させるのは無理。愛情による介護は制度の枠外に。(98.10.31付夕刊)
上記のほかにも、今回の動きで、擁護するような新聞記事も少なくないが、これは自治体の基盤整備を遅らせ、住民の意識改革を遅らせる危険が大きい。介護保険は、高齢社会に不可欠な介護の社会化を担うために誕生したものであり、制度の発足時からその趣旨を崩すようなことをしてはいけない。自治体は、歯を食いしばって、住民のために自らなすべき義務を果たさなければならない。