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表紙絵から

 

 

池田げんえい/1946年神奈川県生まれ。日本児童出版家連盟、現代児童会会員。創作『鬼の会』同人。日本デザイナー学院講師。はり絵作家。

 

● 平成・東海道五拾三次

その45「石薬師」

 

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石薬師寺

 

-石薬師寺-

 

しばらくの拠点、ここ四日市は近代的な近鉄四日市駅を中央に、繁華街が伸び、徒歩10分程度でややくたびれた感じの旧国鉄(現JR)四日市駅。そしてその先、海側に工場群。今日は大雨、しかも寒いがそれを突いて石薬師ヘバスで向かった。・・・が、あまりの寒風に早々に切り上げかかった時、イヤという程足首をヒネってしまった。電車で戻った駅のホームで、ボクは足の痛みと虚脱感でべンチにボーッとしてし、た。どこまでもセピア色の駅舎内にはキスリング姿の学生が4人、身支度に余念がない。自分の学生時代とオーバーラップして見ていると、この駅舎が妙に懐かしく思えてきた。そう、蛍光灯にない裸電球のぬくもりに一人暖まっていた。宿のテレビでは猛吹雪の東京首都圏のマヒを伝えている。家への電話では一時停電したとか。ボクもいつの間にかベッドで停電してしまった…。

 

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史蹟 石薬師の一里塚跡

 

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安藤広重絵「石薬師」

 

冬枯れの頃の夕暮れ時。あぜ道の突き当たりにあるのが地名の由来となる石薬師寺。田んぼで農作業をする村人の着物は現代人の目で見るとあまりにも薄着だが、絵から寒さは感じられない。むしろのどかな温かさが伝わってくる。

 

 

 

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