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挑戦するのは容易なことではなかったはずだが、"闘う公務員"として、一貫して住民の立場に立った福祉サービスを追求し続けてきた山本さんは、知らず知らずのうちに生きるパワーを身に付けた。

「老後を温泉三昧するのも、海外旅行にうつつを抜かすのも人生。でも、借金を抱えて毎日悪戦苦闘しているのも、そう悪くはない人生。何といっても、自分の才覚で経営していくのは、やりがいがありますからね。現役時代、仕事の場では厳しかったかも知れないが、人を裏切った記憶はない。だから、精一杯お客様にサービスをしていれば、絶対にひっくり返ることはないとも楽観してるんです」

また、職権も地位もなくなって、一介のレストランのおやじになって、初めて見えてきたこともある。それはどの世界でも、どんな職業でも、いちばん大切なのは人と人との結び付きということだという。

「老人ホームや老人クラブの人たち、福祉公社の利用者など、毎日、いろんな人が店に来てくれる。四〇年間武蔵野市役所で、市民のために働いてきたことが、有形無形の形になって、今、この店を支えてくれている。だから、第二の人生は第一の人生をどう生きるかによって決まってくるんだと、最近つくづく感じます。就職してからの四〇年間、そして家庭を持ってからの三七年間、父親として、夫として、そして職業人として、正面から誠実に取り組み、自分自身を鍛えてきたことが、第二の人生の礎になったわけですからね」

店の仕事に加え、夜は週二回、大学や専門学校で福祉を講義し、トレーニングで体を鍛えることも怠らないという山本さんの毎日は忙しい。気力体力ともに充実しているからこそできることだ。もちろん、山本さんの最大の理解者であり、現在は共に店を切り盛りする妻の静子さんに対して、毎晩、三〇分のマッサージを欠かさないという良き夫ぶりも健在である。

 

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ランチタイムが終わって、みなで昼食。働いたあとのビールのおいしさは格別!?

 

 

 

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