−名電赤坂駅−
土地の人に教えられた御油松並木を抜けてしばらくするとサイレンが鳴った。このあたりは正午の合図はサイレンらしい。なんとものどかでうれしく思いつつ、ふと左を見ると「大橋屋」の屋号の旅籠があるではないか。御油宿から歩いて20分、いや15分だったかもしれない。なんとなんと、もう赤阪宿に着いてしまった。もう少し足を伸ばそうとする客を強引に食い止めようとしていたのが御油の図だったのだ。そして赤阪の図は53次中、唯一家の中の絵、それが大橋屋である。ボクは「たのもう」といった心境で、小さく「ゴメンください」と中に入った。ボクと同年輩のご主人が機嫌よく出迎えてくれた。主人いわく、二階から中庭を見降ろした図とのこと、残念ながらずい分前に取り壊してしまって今はその面影もない。