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NOVA(National Organization for Victim Assistance)

第24回全国会議参加報告

 

阪上真里

 

大阪被害者相談室では電話相談を通して精神面における援助活動を行ってきており、警察や弁護士会においても被害者支援の必要性が認識され、1998年には全国レベルの被害者支援ネットワークも結成された。被害者自身が少年法改正へ向けて立ち上がったり、マスメディアに被害者の権利が取り上げられることも多くなってきている。しかし、法律面や実際的な援助活動にはまだほとんど手がつけられていないのが現状で、援助活動の多様化へ向けて新たな局面を迎えていると言えるだろう。この時期に被害者支援先進国であるアメリカの現状を学ぶ機会を与えられ、第24回NOVA全国会議に参加して多くの情報と良い刺激を得ることが出来たことは、今後の活動に対する私の姿勢に大きな影響を与えるものであった。

NOVAとは被害者・証人支援機関、司法機関、精神衛生専門家、研究者、被害者やサバイバーなどが参加する民間の非営利団体で1975年に設立された世界で最も古い被害者支援の全国組織である。その使命はあらゆる地域の危機や犯罪の被害者の権利を守り、サービスを提供することである。全国会議の報告に入る前にNOVAの活動を紹介したいと思う。

 

NOVAが貢献した被害者の人権擁護活動

 

NOVAが全国レベルで行ってきた活動や影響を与えた制度には次のようなものがある。

1. 1980年には全米で27の被害者賠償プログラムしかなかったが、1998年までには50州とワシントン特別区、またU.Sヴァージン諸島でそれぞれのプログラムがスタートした。1995年のオクラホマシティ連邦ビル爆破事件直後にオクラホマ州検事総長に対して被害者への賠償金の増額を提言し実現した。

 

2. オクラホマシティ連邦ビル爆破事件後に制定された反テロリズム条例は、米司法省犯罪被害者局がテロや不特定多数に対する暴力の被害者に連邦資金を使用することを認め、9千人の被害者の負担を軽減することとなったが、NOVAはその条項発案を手伝った。

 

3. 1980年には犯罪者の判決を決定するとき犯罪が被害者に与えた衝撃を考慮する司法管轄区は少数であった。1998年までにはほぼ全ての州で仮釈放や判決に際して被害者に対する配慮をし、多くの州では書面や口頭で証言することを許可している。

 

4. 1980年に連邦の刑事裁判助成金プログラムが終了し、多くの被害者支援プログラムが閉鎖された。1984年にNOVAは犯罪被害者法の草案と立法化に直接働きかけ、事態は改善された。その後12年の間に、犯罪被害者基金は22億ドルにのぼる連邦の犯罪罰金を州の賠償金と地域の支援プログラムのために運用した。

 

5. 1980年には被害者の権利はただの概念でしかなかった。1998年までには殆ど全ての州が連邦政府同様何らかの形で犯罪被害者の基本的人権に関する宣言をしている。NOVAはこれにも深く関与しており、被害者のための連邦憲法修正ネットワークを組織し、1996年に修正案を下院に提出し民主・共和両党の支援を大統領候補者の支援を得た。

 

 

 

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