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シート16

 

検討は、回を重ね、総論的な部分から各論部分に入るにつれて、メンバーは出身部署の意向を反映する意見を述べるようになった。また、メンバーを出していない関係各課からも、検討案に対する意見が石田課長に直接寄せられるようになった。

検討してきた内容を、いよいよ計画原案としてまとめる段階に入った。出身部署の思惑の違いなどにより、まだ明確な結論が出ていない部分もあったが、そのような部分については、議論の状況や、計画案全体との整合性を企画部として判断し、原案を作成した。そして、その原案をプロジェクトチームの会議にかけ、了承を得た上で、各部の部長から構成される部長会議に諮り、市長に提出しようとした。

しかし、原案をチームメンバーに諮ったところ、内容的な意見の対立もさることながら、関係各課の了承を得ることなく、プロジェクトチームの原案を部長会議に諮るのは、手続きとしておかしいのではないかとの意見が出された。つまり、部長会議に諮る条件は、各課の合意を得たものでなければならず、組織規定上は何の根拠も権限もないプロジェクトチームが作成した案を、部長会議にかけるのは、手続きとして了承できないと言うのである。

石田課長は、各部の意見の調整は企画部の所掌であること、メンバーは各部の代表として参加してもらっており、改めて各課の合意を得る必要はない、などと説明して、メンバーの納得を得ようとした。しかし、メンバーの中には、自分には部を代表する権限などなく、あくまで所属課の意見を述べるためにプロジェクトチームに参加したに過ぎず、原案は関係各課に改めて諮ってもらいたい、そうでないと原案どおり決定してもその実施に協力できないかも知れない、と言う者もいた。

結局、石田課長は企画部長とも相談の上、企画部長から各部長宛に、企画部の案として計画原案を配布し、各部の意見を聴取することにした。各部から出てきた意見は、既にプロジェクトチームのメンバーから出された意見とほぼ同じ内容であった。

石田課長は、一体今までのプロジェクトチームでの検討は何だったのかと自問せざるを得なかった。

(議論のポイント)

・プロジェクトチームが成功しなかった原因は何でしょうか。どのようにすれば、良かったと思いますか。

 

 

 

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