タンカ
見世物小屋は二回楽しめる。一つは呼び込み、タンカ。もう一つはもちろん実際の舞台である。春子さんの絵看板を指し示しながらのタンカは、客をコマスのに巧みである。たとえばグラシのたこ娘を使ってこのような泣きタンカで呼び込む。
「私は地位もある名誉もある、財産もあるべっぴんであるから、絶対このような子供は生まないのよと誰が皆さん断言できます。御婦人のお腹の中十月十日は仮の宿、オギャアとこの世に産み落すまでは、どのようなお子さん産まれてくるかはわかりません。ここにおりますこの姉妹ふた割れとて、同じ母親のお腹痛め、同じ皆さん一億万この世に生を受けながら、何ゆえかような姿の子供がほら、この世の中に産まれてくるのであろうか、医学や科学では絶対割り切ることができないのだよ、問題のこの姉妹でございます。はいそれではフクちゃん、支度ができましたら、その帯を解き着物を脱ぎ、全裸丸の裸でよぉく見てもらいなさいよ。後ろ姿が皆さん髪形に何の変りがございましょう。頭には京都祇園は舞子のごとく、きれいな花かんざしを差し、顔には紅、白粉つけたこの娘が、今からお客さまの面前で、恥と外聞とをうち忘れたのか、それとも誰も恨むすべもなく、持って生まれた宿命と諦めたのか、この帯を解き着物を脱ぎ、全裸丸の裸になりますれば、この娘のこの腰から下、このもものこの付け根のこのところ見ていただきます。はいそれではフクちゃん、支度ができましたら、その帯を解き着物を脱ぎ、全裸丸の裸でよぉく見てもらいなさいよ。見ていただきますればこのお姉ちゃん、裸のまま立ち上がるんです。立ち上がるといっても、長いあんよもあればほら短いのもあるから、真直ぐ立ち上がることができないから、表からでも見えておりますこの二本の綱が頼りであります。この二本の綱に、ほらしっかりと掴まりながら、まず体を大きく左右に振ります。