新潟の風土を描き続けた画家・佐藤哲三の「みぞれ」を見た時、厚い雨雲が低く低く垂れ込めるその暗さに、これが越後人の血の底に流れる風土だと痛感した。風土とは、そんな目に見えない湿り気や空気の気配のようなものだと思う。
実は私達は「阿賀に生きる」の撮影中、風光明眉な阿賀野川を随分と撮っている。朝霧に煙る川面、新緑の萌える川岸、透き通るような夏の光、紅葉の秋、新雪の冬…季節ごとに様々な表情を見せる阿賀野川の風景に魅せられて夜明け前からポイントにむけ随分と車を走らせた。ラッシュフィルムを見ると、さすがに早起きした分だけいつもと違う美しい阿賀野川を目にすることができてホレボレする。だが、ただきれいなだけで、そこから阿賀野川の風土も生活感も見えてこない。