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(5) 調査委員会

今年度の(財)日本ナショナルトラストの観光資源保護調査「旧中林綿布工場保存活用調査」の第1回調査委員会が7月10日に行われた。旧中林綿布工場に隣接する、重要文化財「中家住宅」の座敷が会場となる。

はじめに熊取町教育委員会甲田教育長から、「旧中林の工場は子どもの頃から自慢のものだった。隣には中家の和風の立派な建物があり、この地域を町の文化ゾーンとして位置づけており、煉瓦工場の保存活用を検討していきたい」とあいさつがあった。委員の紹介は自己紹介の形式をとり各委員コメントをお願いする。トラストの専門委員でもある三村浩史先生、煉瓦工場の建物調査を担当された近畿大学の櫻井敏雄先生、構造が専門の京都大学の西澤英和先生、堺で設計事務所をされている山野俊一先生と地元の各界代表の16名(1名欠席)の委員である。地元の委員の方々は熊取町で育ったという方が多く、中林の工場に対する思い出をお話しされる。

議事の前に、現地である煉瓦工場の見学を行う。重い扉を開けて工場の中に入る。委員の中には工場で働いておられた方もいて、いろいろとお話を聞くことができた。また、子どもの頃から近くにお住まいの方は「朝のサイレンとともに一日がはじまった」とおっしゃられる。また、なにしろ多くの女工さんが働いておられたので、あたりは何かと騒がしかったとか。窓が塗り込められ閉じてしまった跡があるが、何でも、女工さん目当てに来る若い男性の目を隠すためだったとか、近くの寮には多くの女工さんが生活をしていて、声をかけられたとか、かけたとか。そんな華やかな昔話が聞こえてくる。地域の暮らしとともに歩んだ中林の綿布工場だと感じる。

煉瓦工場の見学は20分の予定であったが、45分程と大幅に延長してしまった。戻ってきて、今日の議事「調査の進め方」について議論を行う。調査は広く町民に参加してもらうために、ワークショップの方法で進めることになる。委員長の三村先生からは、「ワークショップメンバーはいろいろな人を集めて、また、調査も臨機応変に進めていけばよい、ワークシヨップメンバーも常連になればよいが、1回の参加者も登録しておいて、機会があれば参加できるような工夫をしておく必要がある」と調査の課題を示され、調査事務局としては、ワークショップメンバーは各委員の方から集めてもらいたい、かたくメンバーは固定しないで、1回だけの参加でもかまわないが、それをつなぐものとしてワークショップニュースの発行を行うと提案した。また、煉瓦工場の保存活用については、西澤先生から、「今後の方向として、文化財指定にするなど価値を高める仕組みを考えていかないといけない。登録文化財は活用について自由が利くので検討する必要がある。また、構造の面から見るとこの煉瓦工場は『お買い得』ではないかと思う。構造の問題は活用に関わって重要になってくるので提案していく』、山野先生から、「先程の感想では浮動沈下がほとんどみられない。煉瓦壁はクラックも多いが、耐震的な検討も必要」と、構造的技術サポート専門家チームの調査の取り組みを今後検討することとなった。

なお、委員会の委員長には三村浩史先生、副委員長には地元を代表して中西商工会長にお願いした。

 

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工場見学の様子

 

 

 

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