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第2節 伝統的民家と克雪住宅

 

はじめに

川西町西半部の渋海川流域一体を仙田地区と呼ぶ。私たちがこの仙田地区の集落に初めて足を踏み入れたのは平成7年の11月、白倉の集落である。集落の人たちとの交流会、一泊のホームスティ、また、その後も集落の行事、お祭りなどにも参加した。ここには様々な伝統文化が受け継がれ、山間にすばらしい茅葺民家の景観を今も残している。

私たちは集落を訪れる回数を重ね、集落の抱える問題も知った。例えば、過疎と高齢化、それに伴う空家の増加などが連鎖的に広がっている。今まで受け継がれた文化の継承者がいなくなりつつある。茅葺民家を維持してきた集落の基盤が揺らいでいる。

ここは日本有数の豪雪地帯である。この豪雪という過酷な自然環境がここでの近代的な生活を難しくしている。仙田地区の全ての集落にこの傾向がみられ、川西町や各集落で様々な活性化のための取り組みがなされている。

 

1 仙田地区の民家

仙田地区は中門造やセガイ造などの伝統的な建築様式の民家が今も残る。屋根は本屋を寄棟造の芽葺、中門を切妻造のトタン葺とするものが多い。

本屋は、もともと寄棟造の茅葺であるが、茅葺の上をトタンで覆う形式、また切妻造のトタン葺に替えられている。中門はあとから増、改築したものが多く、本屋より建築年代が新しいのが一般的で2階建が目立ち、古くはコバ葺であった。

積雪の多いこの地域で仙田地区の伝統的な民家は発展してきたが、近年の生活環境の変化、工業製品の発達、中でも建築材の変化は集落の景観を一変させた。昭和40年代に入り除雪を意識した住宅建築が増えはじめた。ひとつは、トタン葺の落雪式屋根である。これは屋根の勾配を強くして降り積る雪を自然に滑り落とす。特に茅葺屋根は勾配が大きいので、既存の屋根をトタンで覆うと雪が滑り落ちる。もうひとつは、タカユカ式、高床型ともいわれる建築である。基礎を一般より高くし、居住空間をできるだけ積雪の上に出す。建物の廻りの除雪の手間を最小限にし、日照率の少ない冬季の採光も良くしている。基礎の高さは様々であるが床下を車庫や倉庫などに利用する。三階建の建物に匹敵する高さになっている。特に新築住宅でこの二つの方式を取り入れたタカユカ落雪式住宅が増えている。

このような住宅を「克雪住宅」と呼び、この他に屋根の雪を溶かす融雪式や仙田地区にはないが雪の重さに耐えられる耐雪式住宅などがある。

 

2 克雪住宅

川西町は昭和46年に豪雪地帯対策特別措置法(昭和37年生法律第73号)に基づき、特別豪雪地帯に指定された。

豪雪地帯対策基本計画(昭和39年制定)の事業として建設省が平成元年に多雪地域住宅計画(克雪タウン計画)推進事業を打ち出した。この対象地域が川西町を含む特別豪雪地帯である。

この事業の概要は「多雪地帯において、雪下ろしの負担と危険を軽減するとともに、冬期の居住環境を総合的に向上させるため、克雪タウンの基本計画を策定するとともに、地域の情況に応じた共同克雪住宅化事業を一般普及に先立って実験的に実施する。なお、平成4年には、沿道の住宅連たん地区における集団的克雪化に対する補助(克雪住宅共同整備事業)の創設をを行っている。」(平成元年5月29日 住宅局長通達)。

その他、克雪住宅建築に対し、融資制度、税制上の特例などがある。

 

3 克雪住宅の種類

克雪住宅は豪雪地帯の冬期の居住環境を改善するたの住宅である。仙田地区ではそれをいくつかのタイプに分けることができる。

A)落雪式(自然落下式)

滑性のある屋根葺材、主にトタンなどを使い、屋根の勾配を強くして降り積る雪を自然に落下させる方式

B)融雪式

屋根に降り積る雪を熱源(地下水、電気など)を利用して人工的に溶かす方式

C)タカユカ方式(高床型)

建物の基礎を高くし、積雪から建物を守り、採光を良くした方式

D)タカユカ落雪式(高床型落雪式)

落雪式、タカユカ式の二つの方式を取り入れたもの

E)タカユカ融雪式

融雪式、タカユカ式の二つの方式を取り入れたもの

 

 

 

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