第二章
仙田の民家と社寺調査
調査の目的と作業内容
今回の調査の目的は、仙田地区の民家と集落の現況を把握し、地域の人々の暮らしを知り、住民の側から発想するまちづくりを考える基礎的資料を積み重ねることにある。仙田地区12の集落について実施した調査の作業内容は次の通りである。
1 集落の調査
1)集落の立地と過疎の状況。
2)住民が仙田の村づくりについてどんな構想を抱いているか聞き取りをする。
このほか後にあげる3)主屋の屋根伏図、8)社寺の調査も集落調査の一部となる。
2 民家の調査
3)全集落の各家について、資料として主屋の屋根伏図を作り、写真撮影をする。
4)建物の増築改築や建築年代を調べる。また家についての聞き取りをおこなう。
5)各集落の空家のさまざまな状況を調べる。
6)小白倉、大白倉、室島、大倉の集落のおもな家屋の平面図、断面図を作る。
7)基礎コンクリートを高くした、いわゆるタカユカ式住宅など克雪住宅の評価をする。
3 社寺の調査
8)各集落の鎮守、寺院、お堂など寺社建築の配置図、平面図を作り、建築年代を調べ関係資料を収集する。
第1節 調査概要
1 集落の調査
調査した集落は図00にしめす渋海川流域の12集落である。現在この地区を結ぶ主要な道路は国道252号線と403号線である。国道403号線はほぼ渋海川に沿って南北に通り、国道252号線は渋海川を横切って東西に走っている。集落と渋海川、国道との位置関係をみると次のようになる。
a 渋海川沿いでかつ国道403号線沿いにある
小脇、室島、中仙田、赤谷、岩瀬、
(a' 中仙田は渋海川沿いでかつ2国道が交差する地点にある)
b 渋海川沿いでなく関田丘陵中にある
高倉、藤沢、田戸、越が沢、大倉、大白倉、小白倉
(b' 越が沢、藤沢の2集落は閉村し人は住んでいない。しかし鎮守は残る)
これらの集落はいずれも過疎が著しく、子どもがいない集落もある。超高齢化がすすんでいる。
空家が多くあり、このうちには村外の人に売ったり貸したりしたものも多くあり、別荘として使っているもの、職人・芸術家が仕事場として住んでいるものもある。
2 民家の調査
仙田地区10の集落のすべての主屋、計423件の屋根伏図を作成し、写真を撮った。また若干の聞き取りをおこなった。これらをA3判用紙を用いてカード化した。カードには次の内容がもりこまれている。
a 屋根伏図 屋根形式・形態、屋根葺き材料
b 調査家屋が特定できる写真
c 本屋および中門の階数、セガイ造か否か
d 克雪住宅 雪に対する配慮とした住宅に落下式、融雪式、高床式などがある
e 空家か否か 空家の状況
f 建築年代
g 付属屋の有無とその種類
建物の年代判定については、家人からの聞き取り、棟札や普請帳の有無、和釘(洋釘)を使っているか否か、部材の新旧・風化の状況、本屋と中門など突出部との取りあいなどから増築改築状況を調べた。この結果、少なくとも第二次世界大戦終戦(昭和20年-1945)の前か後か(昭和戦前・戦後)の見当をつけることにしたのである。
第二次世界大戦終戦後は、社会状況も大きく変わり、伝統的な茅葺きの家はほとんど建てられなくなった。それ以来すでに50年を過ぎている。1996年の文化財保護法の一部改定により、指定文化財制度にくわえて登録文化財制度ができた。建築後50年を経過し所有者等に保存の意志がある場合には、その建物は登録文化財にできる条件をそなえている。このことも考慮して、昭和戦前・戦後か、ほぼ50年を経ているか否かの見当をつける指標にしたのである。