エルニーニョ現象
気象庁気候・海洋気象部気候情報課
エルニーニョ監視予報センター
予報官 理学博士 二階堂義信
気象庁のエルニーニョ監視予報センターが「エルニーニョ速報」を毎月10日頃に発表していますが、今日は、そのエルニーニョ現象について詳しく説明します。
1997年から発生したエルニーニョ現象は、15年前の1982年〜1983年に発生したものに匹敵または凌ぐ現象であり、「エルニーニョ」という言葉もおなじみになりました。
気象庁では、エルニーニョ現象を厳密に定義しています。定義は北緯4度〜南緯4度、西経150度〜 90度の間の東太平洋に監視海域をもうけ、ここの1ヶ月間の平均海面水温の平年の値に対する差(平年偏差)に基づいて行われています。こういう基準を持っているのは日本の気象庁だけです。
この監視海域の月平均海面水温平年偏差の5ヶ月移動平均値が、6ヶ月以上連続して+0.5度以上になる状態を「エルニーニョ現象」といい、この逆に-0.5度以上になる状態を「ラニーニャ現象」と言っており、この定義が世界的に認められております。
なぜ5ヶ月の移動平均をとるかというと、この海域の海面水温偏差は毎月の変動が大きいので、なめらかにするため5ヶ月の移動平均をとっています。たとえば、7月の移動平均値は5,6,7,8,9月の月平均海面水温偏差を足して5で割った値のことを言います。
この月平均海面水温平年偏差の5ヶ月移動平均値の経時変化を1949年から見ると、エルニーニョ現象は周期としては2年〜7年に1回の割合で発生しています。最近では、1992年に終わって1993年にすぐに始まるという例もあれば、それ以降はしばらくなく、また、1986年から1989年まで続いた例もあって不規則です。
全体の傾向としては、1970年代までは比較的ラニーニャ現象が多く、エルニーニョ現象が少ない、1980年代以降はラニーニャ現象が減ってきて、1990年以降はその現象は現れていません。月平均海面水温平年偏差の5ヶ月移動平均値の最大は、1997年11月の+3.6度で、1982年12月の+3.3度を破って、記録更新をしましたが、1998年6月にはは0.0度と急激に下がり、エルニーニョ現象も事実上終わったと見ています。
海洋では、エルニーニョ現象がありますが、大気の方では熱帯の大気現象で「南方振動」というのがあります。19世紀末から20世紀はじめにかけて、インドで大規模な干ばつがあり、インド気象局のウォーカー長官が、この原因を探るため、世界中の観測点での地上気圧の相関を調査しました。その結果、ダーウィンを基準に見ると、オーストラリアからニューギニア、インドにかけて正の相関があり、タヒチなど太平洋の東で逆の相関があることがわかりました。一方の気圧が上がると他方の気圧が下がるシーソーのような変動で、これを「南方振動」といいます。この現象は、エルニーニョ現象と密接な関係があり、両者の頭文字を結びつけて「ENSO」といっています。なぜこういう現象があるかは最近までわかりませんでしたが、現在では、この「南方振動」と「エルニーニョ現象」との関係は大気と海洋の相互作用によって発生するENSOのそれぞれ大気側と海洋側の現象であると認識されています。