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このような建造物の津波被災状況を観察すれば、基礎の鉄筋(鉄骨)構造と上部の主構造が鉄として一体化していた建物は残り、一体化していなかった建物は流失したことが判る。沿岸集落の家屋は、日本式の伝統的な木造家屋は避け、基礎と鉄で一体となった構造を持つ鉄骨あるいは鉄筋構造の家屋が奨励される。

 

6.漁港別津波逆伝播図作成の提案

日本海中部地震の津波の経験がかえって死亡に結びついた例がある。北海道本土側の大成町などの漁業集落では、大震の強い揺れを感じ、その10年前の日本海中部地震のことをとっさに思い出して津波の来襲を予測した人が多い。そこまではいいのだが10年前の津波のときは地震から津波の来襲まで30分以上あったため、地震の直後、漁港へ走っていき、漁船にエンジンを掛けて沖に避難する時間的余裕があった。今度もそうだと思いこみ、地震を感じた直後漁港に向かって走り早く来た津波のために溺死したのである。1983年の日本海中部地震のときより1993年の北海道南西沖地震の震源のほうが地震後津波が早く来たというのは、北海道大成町の海岸から震源が近かった、という単純な理由によるが、この単純な事実が漁港では正確に認識されていない。

この出来事を、漁業者でない人々が軽々しくあざけることはできない。漁船は家屋と同じかそれ以上に高価な財産である。津波の波源(震源)が遠くて、家から港に駆け付け、もやい(係留ロープ)を解いて漁船にエンジンを掛け、漁船を港外に避難させる余裕があるときには、そのようにして漁船の保全を図り、しかも漁船が陸に打ち上げられて市街地の被害を大きくするのを防ぐのが正解なのである。しかし、津波の波源がその漁港に近い場合は、生命第一ですぐ港から遠い高地の方向へ逃げなくてはならない。

強い地震を感じて津波の来襲が予想されるなかで、港へ行って漁船を沖に出すのが正解なのか、それとも漁船を見捨てて一目散に港から遠ざかるのがよいのかは判断は普通きわめて困難である。

こういうとっさの判断を正しくその場で行うために、その漁港から津波が発したと仮定して描いた「津波逆伝播図」を港に備えておき、常日頃漁業者が見慣れているようにすればよい。地震が感じられテレビやラジオ報道でその地方で起きた地震であるかがわかれば、大ざっぱではあるがこの図によって自分の漁港に津波第一波が来襲する時刻を知ることができる。この意味で、津波警報発令時に予想到達時刻を報道するようになったのは、津波警報の大きな進歩である。

 

むすび

 

北海道南西沖地震の津波から5年あまりを経た。地震と津波の振る舞いについてはこれまでに発表された報告や論文、報道などでかなり詳細に知ることができる。しかしながら、その出来事の中から沿岸に済む人々の命と財産を守るための教訓はまだ十分に取り上げ尽くしているとは言えない。この文が、少しでも津波の教訓を見つめ直す契機となれば幸いである。

 

 

 

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