海上風
図2.12および巻末資料に通年および北半球夏季・冬季の海上風の平年値の全球分布を示す。これらの図を見ると、海面気圧分布(図2.10および巻末資料)に従った風の特徴が現れている。一般に周知されているように太平洋および大西洋では高緯度が偏西風帯、低緯度が偏東風帯となっている。これらの帯域は季節により南北移動しているため、日本付近では夏季に南東風、冬季に北西風が卓越している。インド洋では北半球夏季に南半球高緯度からの南よりの風が卓越し、北半球冬季にはアジア大陸からの北東風と南半球からの南東風が前線を形成している。特に風速の強い地域は、北半球夏季にはアラビア海付近および南極海であり、北半球冬季には北太平洋西部、北大西洋、南極海である。
20世紀前半と後半では風向の分布は大きく異ならないが、風速については後半の値が前半に比較して大きくなっている。先程述べた海面気圧分布の変化によると、北太平洋および北大西洋高気圧と周辺部の気圧差が小さくなっている。それに対してこの結果は矛盾している。20世紀後半は風の観測が計測機器によって行われているが、前半は主として目視による観測であった。20世紀前半と後半の風速の差が計測方法の差によるものか否かは今後検討を必要とする。