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最近では、津波の到来を沖合いにきた段階でキャッチする目的で、気象庁などにより水圧センサー津波計が御前崎沖などの太平洋の海底に設置されて、水圧が観測されている。大きな津波を観測していないので予報に対する信頼度は未知であるが、津波を沖合いでキャッチできると、波源近くでの波形や海岸にいたるまでの増幅のメカニズムがわかってくるため期待は大きい。

津波は海岸に遡上すると何らかの痕跡を残す。これを手がかりに津波の高さを平均海水面からの高さとして測定し、地図上にプロットすることで津波の振る舞いを調べることができる。

明治以前は古文書による他は調べる手立てがない。古文書にも公文書のようなものから日記や詩のようなものまである。津波ではないが良寛の読んだ詩のなかで1828年の三条地震のことが触れられている。

 

○津波の伝搬速度

津波は海の波の中では長波に分類される。長波は波の中で最も速度が大きく、その速度は波長に依存せず、深さの平方根に比例して増加する。風波のように分散しないので第1波の波源情報は海岸まで保持されて運ばれるという根拠になる。波源と観測点の間で海底地形つまり深さの分布が解れば伝搬時間が解る。したがって、発生個所がわかれば予想到達時刻が算定できる。

大陸棚付近の水深200mでは毎秒44mで時速に直すと160km位で新幹線よりやや遅い程度である。太平洋の平均水深4280mでは時速740kmでジェット機並みの速度、日本海は平均水深が1350mだから、時速で415kmとなる。1960年のチリ津波はチリ-日本間約17000kmを約22時間で横断した。1964年新潟地震津波では阿賀ノ川河口に18分で到達した。

津波は海岸に近づくにつれて遅くなる代わりに波長は短くなり、水位を増してくる。このため被害は海岸部に集中する。沖合いでは水位が低い上に波長が長いため津波を津波として認識するのが難しい。津の波と呼ばれるわけである。

 

〇津波の性質

津波は波としての性質をすべて兼ね備えている。そのスケールが大きいために観測することは簡単でないが、反射、屈折、干渉、回折、共鳴などの波特有の現象を引き起こす。平坦な海岸ではぶつかると反射して戻り、深い海から浅い海に伝わると海岸に直交する方向に屈折する。このため半島のような突出た地形の海岸には津波が集中し、湾のようなへこんだ地形の海岸では散乱する。湾に入った津波は湾の固有周期と近い周期を持っていれば共鳴を起こして高くなる。1960年のチリ津波では奥行きの長い湾の奥で水位が高くなり、これが確認された。その他、伝搬経路上に島があると、両側をすり抜ける津波は島のすそ野に広がる浅瀬で屈折し、通過後に重ねあわせ(干渉)が起こり、水位を増加させる。これを島のレンズ効果といっている。島が光線に対して凸レンズのような働きをするわけである。

 

 

 

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