状況としては船舶搭載部、陸上部、Nスター衛星回線ともにほぼ予定どうりの動作をしたがインマルサットAが陸上からのリクエスト要求の呼び出しに対しうまく動作しない現象が生じた。この点に関しては、日本無線(株)三鷹工場の協力を得て原因を調査し解決した。
1]システム時計の時刻同期
今回制作したシステムを複数船舶で使用するときには時刻管理を行わないと送信時刻が重なることがあるためGPSのUTC時刻を利用してシステム時計を管理するよう設計し予定どうりに動作することを確認した。
2]モデムによるデータ圧縮、エラー訂正
データ圧縮、エラー訂正は初期値で設定して使用するが、今回作成した船舶観測データ集積・伝送システムでは、エラー訂正のみ常時設定したまま使用するように設計した。エラー訂正が設定されていない場合にデータ送信を行うと回線状態が悪い場合には直ぐ切断されるケースが多いため常時設定するように改修した。
3]船舶搭載部に集積される1日分のファイル208KBをそのまま送信した場合には約430秒かかるがデ―夕圧縮を指定して送信すると約330秒と100秒程短縮できた。
4]ファイル圧縮
ファイル圧縮をして送信した場合には約130秒の通信時間となり300秒程短縮できた。生データをデータ圧縮しないで送信した場合の約3分の1に短縮できることを確認した。モデムのデータ圧縮とファイル圧縮を混在で使用しても得られる結果は大差なかった。付属資料4を参照。
ファイル圧縮は短い時間で送信できるため衛星回線が不安定な時などは有効であると思われる。
5]Nスターによるファイル送信
海上試験期間中のデータ伝送試験では今回制作した船舶搭載部及び陸上部間での双方向のデータ伝送試験は何の問題もなく正常に行えた。また今回乗船中での船体の動揺、旋回では衛星回線でのデータ通信への影響は見受けられなかった。
今回の海上試験では、本船で使用している一般公衆、FAX回線を実験のために借用したため予定していた試験の一部が行えなかった。集積したデータを夜間に定時刻送信によるデータ伝送や圧縮なしのデータ伝送などの実験は海上試験とは別に陸上試験により確認した。(付属資料4を参照)
6]衛星回線の船体旋回、揺れへの追従性
Nスターは小型船舶も対象に設計されているため旋回についてはほぼ問題ないと思われる。水平方向に対する揺れは仰角25度まで対応する自動追尾ユニット型アンテナであるので特に問題なかった。ただし今回、ファイル圧縮形式を選択して送信したため送信時間が短かかったが、大きなファイルを長時間送信した場合には影響が出る可能性が無いとは言えない。