2.3 波浪解析
2.3.1 既存知見の整理
SARによる海洋波浪の映像化には以下の効果が関係しているとされている(日本写真測量学会編、1998)。
(1)傾斜変調
SARの空間分解能より大きな波長の波によって入射角が変化することによる効果。衛星の方向に傾斜した面からの散乱は大きく、反対方向に傾斜した面からの散乱は小さいことによる。衛星の軌道に垂直な方向に進行する波の場合顕著に現れる。
(2)流体力学変調
マイクロ波を効果的に散乱する波長の短い波が波長の長い波により周期的に変動することから生じる変調。海面の直上の風速と表面流速とにより短い波の波高が変化することによると考えられている。
(3)レンジバンチング変調
SARの空間分解能より大きな波によるフォアショートニングの影響。
(4)速度バンチング変調
衛星軌道に平行に進行する長い波において、波の前面では海面が上昇し、後面では下降することからドップラーシフトが生じてアジマス方向の(前面では進行方向に、後面では進行方向と逆方向に)移動が見られる。この結果、波の谷の部分で収束し明るく、峰の部分で暗く表現される。
2.3.2 収集データ
(1)SAR画像データ
対象地点としては運輸省の波浪観測点の内、波浪計により観測を行っている5地点(留萌、輪島、鳥取、苫小牧、久慈)について、ERS-1/2画像を検索した。その結果、比較的氷深が深く欠測が少ないこと、同期した画像が多いことから留萌を選択した。
入手した画像は北海道留萌沖(日本海)の画像(パス・ロー:66,227)、'95年〜'97年の以下に示した7シーンであった。
'95年9月15日
'95年10月20日
'96年2月2日
'97年7月12日
'97年9月20日
'97年10月25日
'97年11月29日
画像データはレベル0製品を購入し6ルックの画像再生処理を行った。再生した画像は現地観測データと比較するため1/20万地形図を用いて幾何補正し地図座標に合わせた。
画像の範囲を図45に示した。