2.2 海流解析
2.2.1 既存知見の整理
マイクロ波による海流観測としては、マイクロ波高度計によって海面傾斜を計測することで黒潮、メキシコ湾流などを検出した例は多く報告されている。
SAR画像については流速変化の大きい場所に筋状のパターンが見られるという事例が報告されているが(日本写真測量学会編、1998)、実測値との比較を行ったものは見られなかった。
SAR画像に流速変化が現れるメカニズムとしては次の点が考えられている。
・ 流速によって散乱波にドップラーシフトが起こり、強流域全体が画像上でアジマス方向に移動する(特にレンジ方向の流れで顕著に発生する)。
・ 流速の変化部分で表面に収束流が起こり、波浪に影響を与える。
・ 上記の収束域にプランクトンなどが集積し発達する波長に影響を与える。
・ 流速の不連続性が海面直上の風速に影響を与え、風波による散乱に影響を与える。
・ 流速の変化部分で波が屈折・反射し散乱に影響を与える。
2.2.2 収集データ
(1)SAR画像
SAR画像としてERS-1/AMIの画像から現地観測データと同期しているものを検索し、'96年2月24日の紀伊半島東側海域の画像(パス・ロー69,224-225、撮影時間10:34)を入手した。画像データはレベル0製品を購入し6ルックの画像再生処理を行った。再生した画像はデジタルモザイクにより接合してから、現地観測データと比較するため1/20万地形図を用いて幾何補正し地図座標に合わせた。
ERS-1/AMIの諸元を表8に示した。