2.1.5 密接度解析手法の改良
平成9年度の研究では、標準偏差/平均比画像を基にしきい値を定めて2値化し、小領域内の流氷ピクセルの割合から密接度を算出して密接度画像として示した。流氷分布及び流氷域内の密接度の分布傾向はよく合ったが、全体に低い密接度となった。
昨年度の方法を改善して目視判読結果に近い密接度が得られ、かつ海面と流氷の分布を損なわない密接度算出方法を検討した。
(1)解析方法
1] 孤立ピクセルの処理による密接度の向上
密接度の計算では海面の孤立した流氷や流氷中の孤立した海面を個々に評価するより、ある範囲での全体的な密接度が正確に求まることの方が重要と思われる。
そこで2値化する際のしきい値を下げて流氷と判断されるピクセルを増加させた。これにより流氷部分の密接度の増加が期待されるが、同時に海面部分において擬似的な流氷が増加し分布に影響が出ることが懸念される。この海面部分のエラーを補正するために以下の手法を用いた。
中央のピクセルに注目して以下の条件を満たす場合には、そのピクセルについて流氷と海面の値を変更することで、孤立した流氷を除去すると同時に流氷に囲まれた海面を流氷として密接度を増加させることとした。
以下に孤立ピクセルの除去及び流氷にかこまれた孤立した海面ピクセルの流氷化の手法を示した(一般的に多数決フィルターといわれるものの一種である)。
(2)解析結果
従来の方法による密接度画像及び改良した方法による密接度画像を図35に示した。しきい値を下げたことによる流氷ピクセルの増加及び、流氷に囲まれた孤立ピクセルの流氷化により流氷城域内部の密接度を大きく増加させることができた。また、孤立流氷ピクセルの処理を行うことで、海面に現れた擬似的な流氷をかなり除去することができた。
結果として流氷域内部での密接度は7〜8程度に上昇し、部分的には9〜10となった。
得られた密接度分布はかなり改善され目視判読結果と近くなったが、パラメータとしては2値化のしきい値の他に孤立ピクセルの処理でのしきい値(2個以下と6個以上)が追加されることとなった。