2.1.4 流氷抽出手法の高度化
(1)空間特性による流氷域の抽出
局所的な統計量による流氷抽出について、平均と標準偏差だけでは分離できなかった白い氷盤と海面の高輝度域を分離するため、新たな統計量を導入した。
平成9年度の解析において、白い氷盤、黒い氷盤、海面の風波域、暗い海面などそれぞれの小領域で輝度値のヒストグラムを求めたが、この結果から白い氷盤と海面の風波域では輝度値分布がほぼ重なっており2値化での分離は不可能であった。このヒストグラムから、海面の風波域のヒストグラムは分布の幅が広く分布全体が低い輝度値側にあり、一方白い氷盤は分布の幅が狭く分布全体が高輝度側にあったため、3次以上の統計量であるスキューネス(歪度)、カルトシス(尖度)を用いて両者の分離を試みた。
1] 解析方法
1) スキューネス
スキューネス(歪度)はヒストグラムの3次のモーメントであり、ヒストグラムがどれだけ対象形から歪んでいるかを示す指標である。スキューネス(S)はピクセルのDN値をXi 、画像全体の平均をμ、分散をσ、ピクセル数をNとすると次式で計算される。
2] 解析結果
スキューネス画像を図27に、カルトシス画像を図28に示した。
スキューネス画像では、流氷域が高輝度に表現されたが、風波による海面の高輝度域も斑点状に高い輝度のピクセルが残る結果となった。白い氷盤は全体的に黒く表現され、風波域との分離はできなかった。また、標準偏差/平均比画像では知床半島東側の暗い海面の周囲が明るく表現されたが、スキューネスでは余り強くは見られなかった。
カルトシス画像では、海面の高輝度域はかなり除去されたが、白い氷盤も低輝度となり両者の区分はできなかった。氷盤以外の流氷部分は海面から明瞭に区別された。知床半島東側の暗い海面の周囲には狭い高輝度域が見られただけであった。