日本財団 図書館


(4)Scan SAR画像からの流氷解析

平成9年度ではStandardモードの1画像のみであったが、同じRADARSATのScan SAR画像に対して標準偏差/平均比画像を用いる手法を試みた。

Scan SAR画像は1シーン内で入射角が20〜46°と大きく変化しており、特に海面の散乱に大きな差が見られるケースが多い。

3] 解析方法

ここでは'97年4月2日及び'98年2月8日のScan SAR Wide画像を用いて標準偏差/平均比画像を作成し、肉眼による判読と比較することにより適用性を評価した。

2] 解析結果

図11にScan SARモード('98年2月8日)の原画像を、図12にその標準偏差/平均比画像を示した。図12の上段は小領域のサイズを10×10としたケース、下段は50×50としたケースである。また、図13に'97年4月2日のScan SAR画像と10×10の標準偏差/平均比画像を示した。標準偏差/平均比画像に縦縞が3本程度見られるが、Scan SAR画像を作成する際に数種類のモードの画像を接合していることから接合処理による影響が現れているのではないかと考えられた。

・ '98年2月8日(図12)

画像の東側を除いてほぼ全域に流氷が分布していた。画像の右辺(入射角の小さい領域)では風波によると思われる高輝度域が広がっており、風に吹き飛ばされたようなパターンを描く流氷と複雑に絡みあっていた。それ以外の部分では風波の影響は顕著ではなかった。

10×10の標準偏差/平均画像では流氷のパターンそのものは見られるものの、複雑に入り組んだパターンが強調され、陸域と流氷、流氷と海面との輝度値が逆転する部分が見られるなど流氷の抽出には適さなかった。また、画像北東の風波域は全体に暗く落ちていた。50×50の場合もコントラストが強くなったが、沿岸部の流氷が低い値になるなど傾向としては一致した。

・ '97年4月2日(図13)

SAR画像では中央部北寄りから北部にかけて流氷が分布していた。海面の高輝度域は画像の東側に分布していたが、画像中央部から西側についても海面は全体に白っぽいパターンが見られた。特に国後、択捉両島の南東側海面には波長10km前後と思われる縞状のパターンが見られた。

標準偏差/平均比画像では中央から西側にかけての海面のパターンはほぼなくなり流氷域が強調される結果となった。ただし、比較的均質に高輝度である流氷部分は暗く表現され、流氷の境界が強調されるというStandardモードの場合と同様な結果となった。また、画像北東部の高輝度な海面と流氷の混在域は全体が暗く表現された。

これらの例から標準偏差/平均比を用いる方法は入射角が大きい場合には適用可能であるが、低入射角側の高輝度域は全体に暗くつぶれてしまう傾向があることがうかがえた。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION