序 調査研究の目的と方法
1 調査研究の目的
都区部の都市化が進行し、次々と農地が失われていく中で、練馬区は23区の中で最大の経営耕地面積を有している。近年、食の安全性という観点から、新鮮で安全な農作物への関心が高まりつつあるが、本区では本区及び近隣自治体の農産物の供給源という役割を果たしている。都市農業を営んでいく上では、有機物や肥料成分を土壌に施して、土壌の改良をする必要があるが、都市化が進む中で有機分の供給源が不足している。生ごみには有機質はもちろんのこと、農作物の育成に必要な養分が豊富に含まれている。これをコンポスト化して肥料・堆肥として利用することで、都市農業で不足している有機質を補うことができる可能性を有している。
一方、生ごみは一部の世帯で自己処理されている他は、ほとんどがごみとして捨てられ、莫大な費用とエネルギーを使って収集され、焼却され、地域外の江東区の最終処分場に埋め立てられている。平成12年度からは、清掃事業が東京都から特別区へ移管され、練馬区として清掃事業とリサイクル事業を融合した新たな清掃・リサイクル事業を展開することが求められている。これは、区民のより身近な自治体としての練馬区が、生ごみを単に「ごみ」として捉えるのではなく、「資源」として捉え、生ごみの資源化に本格的に取り組む転機であるともいえる。
区内から出される生ごみを回収し堆肥・肥料化することによって、次のような効果が期待される。都市農業の観点からは、土壌に有機物や肥料成分を供給することで農作物を生産し、区民に提供することができる。また、農地のみどりが有する自然の安らぎ、生態系の維持、ヒートアイランド化の防止、保水機能など様々な機能を保全することができる。清掃事業の観点からは、焼却処理しなければならないごみを減らすことができ、その結果、焼却による大気への汚染負荷を減少させることができる。また、地域外に依存している最終処分量の削減を図ることが可能であり、域内処理に近づくことができる。これらによって、国の環境基本計画の4つの長期目標のひとつである「循環」を促進することにより、環境保全に寄与することができる。
本調査研究の目的は、「生ごみの回収→堆肥・肥料化→新鮮で安全な農作物の生産」、という循環システムを活用した新たな都市農業を構築するための基礎的なデータを収集・整理し、システムの基本的なあり方を明らかにすることである。また、大泉学園町で実施するモデル実験の具体的な方法を示すことである。
2 調査研究の方法
本調査研究においては、本区における生ごみ資源化システムの基本的なあり方を明らかにするため、地域内の現況調査、区民及び農家を対象としたアンケート調査を実施した。また、先進他地域における取り組み状況について整理した。
本調査研究のフローを図表序-1に示す。