現在進行中の地方制度改革は基礎自治体の統廃合により、中小の基礎自治体を減らす方向に進んでいる。このことは地方行政のスリム化を進めるものであり、また、財政状況が悪く、自己財源でその活動を支えられない基礎自治体の解消をめざしたものである。基礎自治体の統廃合は強制的なものではないし、改正された行政機構法が規定する基礎自治体設置のための要件は、既存の基礎自治体には適応されないので、このこと自体、問題ということはない。しかし、将来的に、経済効率を追求するあまり地理的に特定民族が集中し補助金の投入にもかかわらず財政状況の改善が見られないような基礎自治体が、もしその意思に反して統廃合されるようなことになれば、きわめて深刻な事態を招く危険性があろう。
(4) 構成区(クメストヴォ)
基礎自治体を構成する行政・地域単位が構成区である。構成区は住民の直接選挙によって選ばれる首長がいるが、議会は設けられていない。構成区が導入されたのは1978年だが、これは農業集団化政策とも連動して基礎自治体の統合が進められた結果、基礎自治体と住民の乖離も進んだため、その溝を埋めるべく設置されたものであった。体制転換までは首長ではなく構成区レベルの評議会、つまり形式的ではあるが議決機関が置かれ、人民評議会体制に特徴的な執行委員会も置かれていた。現在は、議決機関、独立した予算編成の権限はなく、基礎自治体の決定に基づいて構成区長は構成区にあてられた予算を執行し、委任業務を遂行する、いわば基礎自治体の出先機関である。
構成区長は事実上基礎自治体の出先機関のような機能を果たすとはいえ、かつては基礎自治体として存在した構成区は少なくない。それゆえ、当該地域においては、構成区に対する思い入れが強いところもある。
さらに構成区設置の意図は基礎自治体と住民の間を繋ごうとするものであったことを考えれば、基礎自治体における構成区の役割は重要なものと言えよう。構成区長を基礎自治体側からの任命ではなく住民の直接選挙によって選ぶのは、こうした要因が働いているように思われる。構成区長は議決権はないが、基礎自治体議会の審議にも参加し、構成区の利害を主張できる。ただし、独立した予算編成ができないため、多くの構成区において基礎自治体となるための運動が起きている。
1995年の時点で、構成区の数は3,907である。