第2は、上記のことと連動するが、広域自治体の事務については、制度上は、専門性及び広域的観点から、明確に規定されているが、一般的にみて、基礎自治体に比べて、その範囲は狭い。
第3は、第1とも関連するが、地方自治体の事務の中には、たいていの場合、国からの委任事務も多かれ少なかれ含まれている。
第4は、すべてに国において、新たに国の事務を委任する場合、あるいは新たな地方の固有事務を付託する場合の、いずれにおいても法律によって授権することとし、あわせてその事務の実施に必要な経費についても保障しなければならない、とされている。しかし、これも、現状においては、なかばリップサービス的なものといえるだろう。
第5は、基本的な事務は、他の自治体と同様としつつ、その上で、少数民族に対する自治権を保障していることである。この点では、体制移行諸国の地方制度のうちハンガリーの地方自治法第8条第1項、ルーマニアの地方行政法第17条が明確に規定している。体制移行諸国のほとんどが多民族国家であることを考えれば、少数民族の自治権の保障及び事務配分のあり様は、制度的共存のモデルとして、今後、多くの国で参考となる可能性を秘めているといえよう。
第6は、すでに述べたが、都市部と農村部の事務配分が異なることである。
(3) 首長と議会
自治体の運営機関である首長及び議会の代表を、どのような手続で選出するかということは、中央地方関係を規定する最も重要な要因である。今日では、議会議員が、直接住民の投票によって選出される制度は、ほぼすべての国で原則となっているといってよいが、首長の選出方法は国によって多様である。
このような観点からみれば、対象国のほとんどは、首長、議会ともに直接選挙で選出する二元的代表民主制を採っており、憲章主義を採っているロシア連邦においても、自治体によっては例外もあるものの、ほぼ同じシステムとなっている。しかし、ハンガリーでは、県知事のみは間接選挙である。また、ルーマニアの首都ブカレスト市には、その首都制度の中で、今回の対象とした体制移行諸国においても、最も特徴的な仕組みが講じられている。すなわち、ブカレスト市は、県と同等の扱いがなされ、直接選挙による総市長と間接選挙による4名の副首長の外に、県としての役割を果たす知事が政府の、知事を補佐する副知事が首相の、それぞれ任命となっている。
地域代表として直接選出される場合には、その首長は、地域の利益を代表し、それが中央政府の利益と対立する場合には、当然自治体の側につくことになる。それは、場合によっては、中央政府と衝突する場合もあるが、その場合には、ほとんどの国では、司法的解決手段が明示されている。他方で、特に県レベルにいえることだが、ポーランドやルーマニアの県、ウクライナの州や地区の知事のように、首長が中央政府の任命制の場合がある。