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そこで、広域団体を設け、それに多くの権限をもたせるか、基礎自治体にしても合併・統合を推進し、規模の拡大を図ることがしばしば行われる。

その点と関連して、広域団体をその地域の住民を代表する、自治体として構成するか、それとも中央政府の下部機関たる行政区画として位置づけるか、という点も重要である。前者の場合には、分権的な制度ということができ、後者の場合は、集権的である。実際には、例えばフランスをモデルとしたルーマニアのように、広域単位に自治体と国の機関を並立させて設置する例もみられる。

 

3 地方行財政制度の諸相

 

(1) 地方自治体の構造

 

地方自治体の区域や構成に関しては、広域的地方団体と住民生活に身近な基礎自治体から構成されている点は、体制移行諸国すべてに共通している。しかし、それらが何層の構造を有しているか、またそれぞれの層の地方自治体ないし地方団体の平均的規模はどれくらいかということに関しては、当然のことながら、各国の人口規模、面積、社会的構成等によって区々である。

これらの点では、まず基礎自治体と国もしくは連邦構成主体との間に広域的地方団体を1つ設け、2層制の構造を一般的なあり方としている国が多い。ロシア連邦では、基礎自治体である市町村郷と連邦構成主体との間に地区(ライオン)を、ハンガリーでは県を設けている。ルーマニアでも、市町もしくはコミューンと国との間に県を設け、ブルガリアでは、基礎自治体であるオプシティナと国との間に県(オブラスト)を設けている。しかし、これらの国の間でも、必ずしも広域的地方団体を地方自治体としているわけではない。ロシア連邦の地区やハンガリーの県が完全な地方自治体であるのに対して、ルーマニアやブルガリアの県は、国の出先機関としての位置づけが強く、知事が任命制となっている。ただ、ルーマニアの県については、自治体的な性格も強く持っている。また、連邦制をとっているロシアでは、憲章主義がとられているため、地区によっては市町村郷の自治権は認められていない場合もある。

一方、ポーランドでは国と基礎的自治体である市やグミナとの間には、県とその支庁という2つの広域的地方団体が設けられており、また、ウクライナでも国と市町村との間には、州と地区(ライオン)という2つの広域的地方団体が設けられていて、3層制の構造となっている。両国とも、自治権は基礎的自治体にしか認められていない。

次に、基礎的自治体の人口規模は、平均3千人強のハンガリーから平均3万人を超すブルガリアまで、10倍の差がある。また、ロシア連邦を除く基礎自治体の平均面積では、ハンガリーの30平方キロメートルからブルガリアの435平方キロメートルまでと、格差が大きい。ちなみに、国もしくはロシアの連邦構成主体を構成する広域的地方団体の数は、おおむね27〜8から50団体弱であり、いまのところ唯一例外となるのが、ブルガリアの9県である(しかし、ブルガリアも、今年中には県域の再編が実施され、旧県城(オクラグ)が復活し28県となる予定である)。

 

 

 

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