(ウ) BOT方式の概要
一般的なBOT方式のスキーム図は図表2-4のとおりである。
プロジェクトカンパニーは施設利用者からの利用料収入によって借入金の元利金返済や保守・管理に関する費用を支払う。このため、施設利用者数が当初見積りに達しなかった場合には、利用料収入によって各種費用の支払が困難となる。この場合のリスクは金融機関や出資した民間企業がリスクを負うこととなるが、現地政府としても施設の存続が困難となれば、利用者に不便・負担を強いることとなる。この点でBOT方式は、プロジェクトの収益性の見極めが重要なスキームである。
(エ) BOT方式のリスクと問題点
BOT方式のリスクとしては、コンセッションリスクとプロジェクトコンロールリスクが挙げられる。
1] コンセッションリスク
BOTの前提として、コンセッション・アグリーメントとしてプロジェクトの期間、期間終了後の政府への譲渡条件、料金設定に関する権限、収入の分配方式という基本的な契約を締結する。しかし、対象プロジェクトが公的インフラであるので、社会条件、政治的な背景などを踏まえ契約を締結しないと、料金設定水準が政争の具となるような政治的、社会的要因のリスクを受けることになりかねない。
2] プロジェクトコントロールリスク
基本的には民間企業が主体となって施設を建設し運営を行い、民間のノウハウを生かすのがBOT方式の特徴であるが、一方で公的インフラとして、公共性からの制約を受けるため、民間企業として完全にコントロールできない場面もありうる。これは、プロジェクトの収益性にも障害を起こしかねないので、事前に収益性を適切に見積もる必要がある。当初、想定していた運用が、公共性から来る制約によって運用できなくなるリスクである。