第1章 総論 (基礎的自治体のあり方)
―基礎的自治体の自己再編成能力―
1 はじめに
平成10年5月に地方分権推進計画が閣議決定され、平成11年1月に始まった通常国会においては、地方分権推進関連法案が審議されている。国及び地方公共団体が分担すべき役割を明確にし、住民に身近な行政をできる限り身近な地方公共団体において処理することを基本として、地方分権が進められているが、こうした地方分権の進展に伴い、地方公共団体自身も住民に対するサービスの供給システムのあり方を検討する必要に迫られている。
すなわち、従来の機関委任事務やいわゆる通達行政に代わり、地方公共団体が自らの責任において主体的に実施する事務の比率が増加することにより、地方公共団体の自己責任原則の徹底が一層求められることになるため、組織の再編をはじめとする団体運営の効率化を図るとともに、住民負担の増加を可能な限り抑えながらより質の高いサービスを供給する努力が従来にも増して求められることになるのである。
とりわけ、基礎的自治体は、住民に最も身近な立場にあって日常生活に関わる地方行政の大部分を担うこととなるため、政策の企画立案、実施過程において地域の特性や住民の声を活かした自主性発揮や創意工夫が一段と求められることが予想される。このような動きを受けて、昨今、行政改革などに関して先進的な試みに取り組む地方公共団体も増えてきたが、一方で汚職や不祥事発生の際に見られるように旧態依然であるとのマスコミ批判も目につくところである。21世紀に向けて、あらゆる分野で構造改革、システム見直しの必要性が言われるが、それは地方行財政の分野にあっても例外ではない。
そこで、本調査研究委員会では、地方分権が進展する時代において、地域住民に対して行政サービスを供給する行財政システムほどのようなものであるべきか調査研究を行うこととした。第1章では、総論として「基礎的自治体のあり方-基礎的自治体の自己再編成能力-」について、自治体内部の組織や業務などを抜本的に見直す「行政改革」の観点から、また従来の組織の枠を超えた連携施策の取組として「広域行政・市町村合併」の観点から、それぞれ検討を行った。第2章では、「手法」「分野」「人づくり」、それぞれ新しい時代に求められる行財政システムを探る上で欠かせない個別の論点について検討を行い、地方自治の本旨に基づいた地方分権に相応しい行政サービスの供給システムを実現していくために必要な事項などについて検討を行ったものである。