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エヌケーケー総合設計 石田富康

 

船舶のトン数は、船舶の安全、環境の保護等に関する諸規則への適用や船舶に対する諸サービス等の基礎となる、個々の船舶を特徴づける極めて重要な指標である。

我が国におけるトン数測度は地方運輸局等の船舶測度官が図面審査、現図確認、実船確認及びトン数計算書の作成といった専門的な作業を造船所又は設計会社等から供与された図面やデータ等を規則に照らし合わせて行うという手作業により実施されている。

一方、近年事業所では船舶の建造に関する設計、製造の分野に電算システムを導入する等の技術革新が進められ、作業の合理化が図られている。

しかしながら、国によるトン数測度は上述のとおり電算化された設計データを有効利用できる体制が整っていないため、事業所は電算化されている諸データをトン数測度を受けるために船体線図、測度要領図等の図面に転記し、書面として国に提出するという一連の電算化された設計システムとは別の作業を要求され、合理化の妨げとなっている。このように国・造船所ともトン数測度が手作業による多くの時間を費やしているので、電算化された設計データをトン数測度へ利用する方策が望まれていた。

船舶測度の電算化の動きは、事業所、測度官の厳しい、煩雑な業務や作業を、公正で容易なものにするために、過去においても多くの努力が払われてきているが、未だ利用可能なものはない。

このため、本調査研究は事業所の電算データの有効利用が可能となる方策を確立するために、各事業面における設計の電算化の範囲、内容等の実態を調査し、それらにできる限り共通して運用できる測度システム・(ソフト)を確立するための基礎研究及び、船舶のトン数測度に係る船舶ごとの計測値等の実績を蓄積し、活用するための基礎研究を行うことを目的として、平成7年度から3年計画で開始された。

平成7年度は、事業所の設計部門における電算システムの内容を調査しトン数測度の電算化に関して共通する部分を研究するためのアンケート調査、過去又は現在、既に電算化されているトン数測度システムの調査及び本調査研究で開発するトン数測度システムの概要を取りまとめた。

平成8年度は、アンケート調査の結果を基に電算化の進められている事業所を抽出し設計データから測度用データを収集する方法の研究(特に上甲板下)、トン数測度システムの概要についての検討を行った。

その検討の結果として、各事業所において、設計用線図ファイルを作成している事業所は少ないことが判明し、当初計画していた各事業所の設計用線図ファイルから本部会が開発するインターフェイスプログラムを介してフレーム・オフセット・データを収集し、トン数測度に必要なデータに変換する方法では、事業所の負担が多く、現実的でないことが分かった。

そこで、事業所が少ない負担で提供できるデータを使用したトン数測度システムを構築するために、既存および試作プログラムによるテストを行い、これらの結果に基づいて、新しいトン数測度システムのコンセプトを検討した。

既存のプログラムとしては、中造工のグロス・トン計算プログラムを借用し、運輸局による測度実績のある船舶について、測度結果とプログラム結果との比較調査を実施し、制度の調査を含め、プログラムの機能の調査を行い、今後のトン数測度システム開発のための資料を得た。また、事業所所有の容積計算プログラムを借用し、補間処理の精度を調べることにより、今後開発するトン数測度システムにおいて必要なシステムレベルを把握した。

 

 

 

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