(a)第III章の全面見直し
今回の改正は、基本的に現行の第III章の規定の合理化を図るとともに、詳細な設備の性能要件を強制コード(LSAコード)に分離することによって条約の簡素化を図ったものである。同改正では、設置要件等の大きな変更はないが、各救命設備の性能要件を向上させるとともに、海上脱出装置、耐暴露服といった新設備を導入し、救命設備の有効性を高めている。
イ 海上脱出装置
現在の降下式乗込装置を発展させたものである。一般には降下路とプラットフォームから構成され、救命いかだを次々に係留し乗客を迅速に移乗させるものであるが、降下路に救命いかだが直結し、いかだを含めた1個のシステムとして使用されるタイプのものもある。
ロ 耐暴露服
現在のイマーション・スーツの保温性を緩和し、手袋等を取り外し可能とすることで、作業性の悪さを改善したもので、救助艇の乗員及び海上脱出装置の操作要員用として要求される。
(b)RORO旅客船の安全性強化
1994年9月28日未明バルト海でエストニア船籍RORO旅客船「エストニア」号が転覆・沈没し、900名以上もの犠牲者を出した。
本件事故の重大性に鑑み、区画、脱出、救命、無線等多岐にわたってRORO旅客船の安全性を強化するSOLAS条約改正が翌95年11月に採択され、昨年7月1日をもって発効している。そのうち救命設備については、第III章の全面改正に合わせて本年7月1日より適用されることとなっており、現存船についても2000年7月1日以後の最初の検査の時期までに適合することとされている。
救命設備については、以下のとおり急速な傾斜・転覆及び夜間・荒天下における遭難に対する迅速な退船・救助に重点を置いた改正がなされている。
イ 自動復原救命いかだ、両面救命いかだ
いかだの反転を行うことなく容易に乗客が使用できることを確保するものである。
ロ 高速救助艇
遣難者の救助及び退船時のいかだの支援をより迅速に行うためのものである。荒天下での使用にも耐えうるものとされている。