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RORO船の車両甲板上海水滞留問題

カーフェリー「エストニア」による転覆海難以来、北ヨーロッパでは「RORO船に対する損傷時復原性強化」の動きが活発化している。

北ヨーロッパ諸国は、大研究プロジェクト(北ヨーロッパ・プロジェクトと呼ばれる)を組み、RORO船の損傷時復原性に関する研究を推し進め、多くの研究成果が公表されている。

この研究成果に基づいて、RORO船の損傷時復原性への車両甲板上の滞留海水による影響を考慮する規則修正案(現行SOLASの決定論に基づく客船規則の改正)が作られ、IMOで審議されたが、多くの国の賛同は得られず、北ヨーロッパ各国は同規則を「ストックホルム・アグリーメント」と呼ばれる地域限定規則として発効することとなった。この規則は、広い車両甲板にある量の海水が滞留しても十分安全な復原性を確保するというもので、既存船に適用した場合には多くの船において、バルジを付加したり、車両甲板に隔壁を設けたりという対策が必要となる。

北ヨーロッパ諸国は、同様の考え方を、現在調和作業の進む確率論に基づく損傷時復原性規則にも導入すべく規則案を作成、提案している。調和作業を行うワーキング・グループでは、この考え方を導入することに対する反発もきついため、作業を迅速に進めるために規則案には盛り込まない方針をとっているが、北ヨーロッパ諸国はぜひとも入れるべきという姿勢で臨んでおり、あらゆる機会(例えばHSCコード等にも)をみつけて巻返しを図っている。

RR71においては、昨年度、運輸省の船舶技術研究所において、北ヨーロッパ・プロジェクトと同様の手法で損傷RORO船(日本で用いられている典型的なカーフェリー船型)の模型実験を行い、車両甲板への海水打込み、滞留そして転覆について調査している。その結果、波周期が7〜8秒においては、北ヨーロッパ・プロジェクトで得られた結果と比較的よく一致する結果が得られるなど、いくつかの成果を得ることができた。

 

 

 

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