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3.近畿発着中・長距離フェリー航路を取り巻く環境変化と利用量

長距離フェリーは、1968年(昭和43年)に、はじめて神戸〜北九州に就航してからほぼ30年の間に輸送手段としての地位を確立してきた。その間、経済成長に伴う国内輸送需要の拡大に対応するため、全国に航路ネットワークが整備されている。そして、フェリーの持つさまざまなメリットが評価され利用量も増大してきたが、近年高速道路や本四架橋など交通インフラの整備が進み、これが中・長距離フェリーの利用量に大きな影響を与えている。

特に、近畿と四国・九州とを結ぶ中・長距離フェリーは本四架橋と高速道路の供用開始により大きな影響を受けたと推定される。平成9年度の九州及び四国航路での利用量は前年度に比べて減少している。景気後退など他の経済的要因による減少もあると思われるが、フェリー船社へのヒアリングにおいても高速道路と本四架橋の影響が指摘されている。

また、中・長距離フェリーと競合するJRや航空における運賃の引き下げもまたトラック(貨物)及び旅客の両面でフェリー需要に大きな影響を及ぼしている。そのため、阪神〜四国では昭和60年以降、阪神〜九州では平成2年以降、旅客輸送量は減少している。車両輸送量も平成8年以降は近畿発着のすべての航路で減少しており、中・長距離フェリーを取り巻く競争状況が厳しくなっていることを示している(表2-4,図2-2)。

 

表2-4 近畿発着フェリーの利用実績

 

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出典:近畿運輸局 輸送課  (注) (  )は対前年比

 

表2-4には明石海峡大橋(平成10年4月供用)の影響が入っていないため、阪神〜四国航路の減少量は比較的少ないが、明石海峡大橋開通後は、阪神〜高松航路のフェリー運航船社4社中3社が撤退するなど非常に大きな影響が生じている。

山陽自動車道の全線供用により、阪神〜九州間では、2本の高速道路(山陽自動車道、中国自動車道)と2本の国道(国道2号、国道9号)の利用が可能となり、阪神〜九州間の自動車走行上での選択肢が増え、フェリーにとっては大きな脅威となっている。

 

 

 

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