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年齢、性別、接触の状況、地域などの違いを明らかにすれば、データの意味も信頼性も高まるだろう。混乱を招く要因を適切にコントロールするためには、多変量解析を行う必要がある。

 

M.lepraeが主にどこから入ってどこからで出ていくのかは、今なお明らかでない。最近の研究は、鼻を通して伝染することと粘膜の免疫性を強調しており、これは興味深い仮説であるが、いまのところ説得力に欠けている。もし、M.lepraeが鼻腔内に存在することが、鼻が時的な通過経路となる証拠だとすれば(鼻が空気フィルターの働きをする)、そのデータは入り口や出口としての皮膚の役割とも一致していなければならない。この問題を解決するには、長期にわたって、大規模な調査を行わなければならないだろう。

 

化学療法は伝染を抑えることができるだろうか?

効果的な化学療法で、M.lepraeの感染の危険や、感染によるハンセン病の発症を少なくともある程度抑えることができると推論されるが、そのような効果を納得のいくように証明するのは非常に困難である。ハンセン病の発症は明らかに、社会・経済的な開発が環境や行動にどの程度及んでいるかに深く結びついている。患者が診断を受け、治療を受けるまでに長い間まわりを感染させやすい状況に放置されているとすれば、どんなに優れた治療プログラムでも、ハンセン病全体の治癒率はいくらも向上しないだろう。MDT療法の効果は、政策的には大きな意義を持っているものの、疫学的に納得できるまでにはとうてい至らないのである。

 

ハンセン病とワクチン

調査の対象となる母集団が違うと、BCGの効力が変わってくるという問題は今なお説明できないままである。結核に対するBCGの効力が同じように変わってくるという事実から、この問題が公衆衛生上重要な意味を持っており、ぜひとも研究すべきであることがわかる。BCGの効果は時とともに薄れているようである。BCGを投与して20年後、結核に対しても、ハンセン病に対しても何らかの影響力があるかどうかというデータは何もない。ここ20年から30年の間は、ほとんどの国で出生時にBCGを投与されてきたので、今こそ、乳児期に投与されたBCGが成人の病気にどの程度影響力を持っているかを調査するチャンスである。BCGを繰り返し投与した結果、ハンセン病に対する予防効果があがったというベネズエラ、マラウィ、ミャンマーからの実例は、今後このような研究を行うことの重要性を示唆している。ブラジルでは、小学生にBCGの2度目の投与を行う実験を続けているが、この結果、非常に実際的な干渉活動に対する重要なデータが得られるだろう。

 

ハンセン病の免疫学やワクチンに関する研究は、結核に取り組んだ国際的な研究機関と提携して行うべきである。この2つの病気の感染や発病を比較することで、有益な洞察が得られるだろう。結核ワクチンの試験投与によって得られた結果の中には、将来ハンセン病も含むべきである。結核に対するpost-exposureワクチンに現在関心が集まっているが、これは、リスクの大きい地域の住民にも、あるいは治療学的な意味でも、ハンセン病に干渉する方法として大きな意義がある。

 

参加者:ポール・ファイン(議長)、R・トルーマン(報告者)、G・ビジューン、K・V・デシカン、A・デイアロ、V・K・エドワード、M・D・グプタ、J・D・ハベマ、S・泉、C・K・ジョブ、C・M・マーテリ、A・メイマ、R・G・レディ

 

 

 

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