社会的・経済的復帰
議長:T.フリスト氏
回復者を社会的・経済的に社会復帰させることは、人間の尊厳を確立し、いわれなきスティグマを取り除き、経済的な自立を促し、地域社会からの限られた資金を能率的に活用するために重要である。
今まで回復者が成し遂げた社会復帰の程度には、世界的に大きな差がある。回復者の医療介護を一般的なヘルスケア・システムに取り入れる点では、かなりの進歩が見られるものの、回復者たちを地域社会を基盤とした社会的・経済的支援システムに溶け込ませる点では、まだ不十分といえる。
第一の理由に、保健省(厚生省)やWHOはハンセン病関連の医療的な局面での調整を行うものの、その社会的・経済的支援企画までは任務としていないということあげられる。近年では公衆衛生の目標を達成するために、MDTを配布することが活動の中心になっている。第二の理由として、本当の意味での社会復帰を実現させるために取り組むべき、社会的・経済的問題が非常に複雑で多様なことがあげられる。第三に、ハンセン病に深く関わって活動しているNGOのほとんどが、本部、および現場に、社会的・経済的面についての研修や経験を積んだ専門家が少ないという現状がある。第四に、専門知識や活動計画のある国際的、あるいは国や地域の行政側やNGO組織と、ハンセン病に関わっている機関との間での接触や協力体制が足りないこと。そして最後に、いうまでもなく資金には限りがあるということ、スティグマを取り除くのは難しいということ、そして現状への満足度などの問題があげられる。
上記ような状況を考慮して、社会復帰のワークショップは以下の項目を提言する。
1. 回復者の社会的・経済的復帰と、彼らの能力強化を、治療や後遺障害の予防とともに、ハンセン病対策を立てる際にもっとも優先すべき問題にすること。
2. 社会的・経済的な諸問題について専門知識や活動計画を持っている国連関連機関や国の各省庁、国際的・国家レベル・地域レベルのNGO等によって、回復者に対する医療以外も含めた問題の総合的で効果的かつ効率的な対策が、行われなければならない。
3. 社会的・経済的問題に関する実際的な経験を持つ人々や、研修を受けた人々を、ハンセン病対策に取り組んでいるNGO組織に任命し、国家や地域レベルで、教育、職業訓練と就職斡旋、小規模事業の開発、重度障害の介護や貧困のケア、住宅供給、交通手段、その他の重要な社会・経済的なニーズに対する総合的、効果的、効率的な活動企画立案に当たらせること。