日本財団 図書館


1. 緒言

 

平成2年(1990年)以降、主に燃料油に対する各船級協会の鋳鉄材料の使用規制を端緒として、造船所、弁メーカーの間で船用球状黒鉛鋳鉄(ダクタイル鋳鉄)弁のJIS規格制定の要望があった。財団法人日本船舶標準協会では、平成6年度以降、機関部会配管ぎ装品委員会で、基礎調査、規格作成にむけての作業を進め、平成7年度には5K船用球状黒鉛鋳鉄(ダクタイル鋳鉄)弁のJIS規格案が提出された。さらに、10K、16Kの船用球状黒鉛鋳鉄(ダクタイル鋳鉄)弁のJIS規格制定が望まれる状況となった。

そこで、当委員会/ワーキンググループでは、呼び圧力10K、呼び80Aの玉形弁について、呼び圧力5Kと同様に小型化、軽量化を指向して規格モデル案を作成・試作した。また、比較のため現行JIS船用10K鋳鉄玉形弁及び逆止め玉形弁(JIS F 7307、F7375)についても流量試験を実施した。

試験実施段階で考慮すべき技術的背景としては、5K船用球状黒鉛鋳鉄(ダクタイル鋳鉄)弁規格化の時と同様に次の2点がある。

 

1. 有限要素法(FEM)による応力-ひずみ解析によって、弁箱鋳鉄鋳物のような複雑な構造体の外力および内圧に対する総合的な解析が可能になった。

2. 流量特性試験が、公共機関の試験装置で比較的容易に高精度に行なえるようになった。

 

従来の手法に加えて、これらを供試弁の検証、評価に取り入れ、試験を計画・実施した。有限要素法については、従来より、運輸省船舶技術研究所で積極的に取り組んでおり、同大阪支所伊飼委員が中心となって解析・試験を進めた

 

2. 試験目的

 

本試験では

○配管ぎ装品専門分科会案による10K-80A球状黒鉛鋳鉄鋳鉄玉形弁及び逆止め玉形弁

ΟJIS F 7307,7375船用10K鋳鉄玉形弁及び逆止め玉形弁(口径80A)

を試作し、

●設計されたモデルの検証のための試験とする。

●モデルを比較検討し、その特徴(長所、短所)を明らかにする。

●有限要素法(有限要素法(FEM))解析による弁箱の外力及び内圧に対する挙動解析結果と試作品の加圧下のひずみ測定試験結果を比較検討する。

●試作弁について詳細な流量特性試験を行い、その流量特性を定量的に評価する。

 

以上を目的として実験を実施する。

 

3. 試作実験方法

 

3.1 実験の実施状況

●試作・試験時期:平成10年9月 - 平成10年12月

このうち

●加圧時等の弁箱、ふたのひずみ測定:  平成10年12月7〜8日

●流量特性試験:  平成10年12月9〜11日

に実施した。なお、配管ぎ装品専門分科会を12月10日に開催し、流量特性試験の一部に立会した。

 

ひずみ測定、流量特性試験に先立、伊飼委員(運輸省船舶技術研究所大阪支所)が、配管ぎ装品専門分科会案の有限要素法(FEM)解析と、ひずみ測定用ソフトウェアの開発を行った。一方、日の本辨工業株式会社では、試験に供する弁の試作・材料試験.完成水圧試験(質量測定、寸法検査、水圧試験、静水圧に対する全閉トルク測定)を管理・実施した。

 

 

 

目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION