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(3) 産業振興の方向性

 

1]水産マーケティングによる振興

先述のとおり、確かに離島と本土との立地条件格差は大きいが、水産業にとっては離島の環海性が有利に働き、取る漁業から作り育てる漁業への転換が進められている。

また、水産物やそれらの加工物を大都市向けに出荷するシステムを構築し、大都市にアンテナショップを設けるなど、いわゆる水産マーケティングを行っている地域もある。

水産物やその加工物のブランド化を図ることで、その地域の特性情報を多方面へ発信し、良質でかつ、その地域でしか作れないもの、取れないものという唯一無二なブランドを形成することやその販売ルート、ターゲットを明確にし、確立した流通システムを構築することにより、水産業振興を図ることが重要である。

2]魅力ある観光振興

離島にとって観光とは、地域振興を阻害する隔絶性、孤立性、環海性といった不利条件を逆手にとるものであり、全国でも離島のポテンシャルを十分に活かした観光施策が展開されている。

しかし、全国的な景気低迷とリゾート施設、アニマパークの飽和性、個性あるレジャー施設の欠乏などにより、観光リピーターは決して多いとは言えない。

また、離島の観光は季節に偏りが生じ、夏期集中型とならざるを得ない。さらに、気象、海象等の諸条件により、交通アクセスが遮断されるなどの問題もあるとアンケート調査結果では、観光客の観光目的はおおむね「のんびり温泉でくつろぎ、地元のおいしいものを食べる」という『のんびりグルメ』が多い。観光客の増加、つまり交流人口の拡大には、今ある観光資源(自然環境、宿泊施設、レジャー施設etc)を随時メンテナンスするとともに、さらに魅力ある仕組み、仕掛けを考えるべきである。

観光地は観光客にとって、いつも目新しいものであり続けることが重要であり、リピーター増加のカギは観光資産をいかにうまく運用するかにかかっている。

 

(4) 情報ネットワーク化

 

得てして、離島と本土では情報量に相違がありがちに感じられるが、昨今のパソコンやインターネットの普及により、遠隔地でも大都市と同じ情報を同時期に入手できるようになった。

離島の悪条件が功を奏すもう一つの事例として、通信の電波環境があげられる。電波通信は大都市のような高層ビルが乱立する地域よりも、離島のような障害物の少ない地域が格段に有利であり、この優位性を利用して「離島発情報ネットワーク構想(仮称)」を確立し、産業活性化、観光資源、保健・医療・福祉等、さまざまな分野で活用が期待できる。

ただし、情報ネットワークを確立できたとしても、それを運用していく人材も同時に必要になってくる。ネットワークに限らず様々な振興策においても、それをプランニングし実行していくリーダー的人材の育成、確保は絶対的に必要である。

 

 

 

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