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第7章 電波伝搬

 

7.1 総論

全く他の障害物のない自由空間に空中線を置いて電波を送信すると、電波はその空中線の指向性に基づいた強さで四方八方へ伝搬をしてゆき、その強さは距離の自乗に逆比例して減衰する。これは、図7・1でわかる様に、電波のエネルギーが空中線からの距離を半径とする球の表面積に拡散し、その球の表面積に逆比例した強さになるからである。しかし、地球上で電波を使用するときには、このような完全な自由空間は考えられない。まず、地球という地面や水面がある。地面には山岳などの凹凸や人造の建造物などがあり、海面もその気象条件に応じた波浪による凹凸が生じている。さらに、海面と地面とではその電気抵抗(導電率)が異なっており、地面でもその土地の構成などによって、導電率は必ずしも一定ではない。周波数が同じであれば、導電率は表に示すように地上より海上の方がよいので、電波の伝搬損失は海上が小さい。

 

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(参) 純粋な銅の導電率は5.8×107 〔Ω/m〕

図7・1 電波の距離による減衰

 

地球の上には空気(大気)があるが、この大気は上にいくほど薄くなって、ついには真空状態になる。この空気が比較的濃く存在し、いろいろな気象現象を生ずる地表から10数kmまでの部分を対流圏と呼ぶが、このような大気も一部の電波の伝搬に影響を与える。そして、その影響は、大気の気圧(密度)、温度及び水蒸気の含有の度合(湿度)によって顕著に変る場合もある。

対流圏を上に昇っていくと大気はさらに薄くなり、もはや電波の伝搬にはほとんど影響を与えなくなるが、なおその高度をあげていくと、今度は一層薄くなった大気が太陽からの放射によって電離し、電子とイオンに分かれている電離層という層をつくっている。電離層は地上数10kmから数100kmのかなり厚い層であって、その中にある遊離した電子が電波の伝搬に大きな影響を与える。この電離層の構造などについては次の節で述べる。

 

 

 

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