水晶振動子X talは非常にせまい範囲の周波数で誘導性となり、 発振周波数に対して等価的に図3・18のL2で表される。その周波数に対して図3・17のLT, CTの共振回路が誘導性になるとき、 すなわち等価的に図3・18のL1で表されるとき、発振条件を満たし、発振回路となる。水晶振動子が誘導性となる周波数範囲はきわめて狭く、その範囲内のみで発振条件を満たすよう回路を構成すると、周波数の安定な発振回路となる。
3・2・3 周波数シンセサイザー回路
シンセサイズ(Synthesize)とは合成するという意味で、 周波数シンセサイザーは1つの(又は小数の)高精度、高安定度の発振器より、これと同じ精度、安定度を持つ多くの周波数を合成していくことである。その回路方式はいくつかあるが、現在最も良く使われているPLL回路(Phase Locked Loop Circuit)について説明する。
図3・19に基本的なPLL回路のブロック図を示す。位相検出器の片方の入力に基準となる周波数frefを入力する。この時電圧可変発振器がある周波数で発振していたと仮定し、 その周波数foがプログラムカウンターで分周され1/N foがfrefより低いか位相が遅れていたとすると位相検出器より低レベル側の出力が出て可変周波数発振器の発振周波数を前より高い周波数で発振させるように働く。逆の場合は低い周波数で発振させるように働く。このようにして何回かfrefと1/N foが比較され絶えず位相誤差を無くすようにループが回る。そして最後にはfrefと1/N foの位相差は零となる。この結果位相検出器の出力はフローティングの状態になり(位相検出器として利用するICの特性による。)ローパスフィルターの出力レベルは変動しない。この結果電圧可変発振器の発振周波数は前の周波数に等しい。このようにローパスフィルターは高調波成分をろ波するだけでなく電圧の保持機能も果す他、PLLの応答を左右する重要な役割を果しているが、ここでは省略する。
このようにしてプログラマブルカウンターのNを変えることにより、いろいろな周波数を基準発振器と同一の精度と安定度で得ることができる。なお、プログラマブルカウンターのNを変えてから出力周波数がその求める周波数になるまでの引き込み時間や、求める周波数にゆらぎなどなく安定しているかという性能はPLLの回路設計に係わる重要な要素である。