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まず、相対速度のベクトルで概略のCPAとTCPAとを知ることができ、これによってそのときのレーダーの視野の中の全船の危険度を一目で把握することができる。次に、真速度のベクトルによって、目標の速力と針路を把握することができるので、アスペクトが明りょうに変わる。すなわち、これによって海上衝突予防法等でいう態勢関係(横切り、追越し、同航、反航等)がつかめ、衝突の危険がある場合には、どのルールが適用され、どのように避航すればよいかが分かる。

(注)※アスペクトとは自船と相手船とを結んだ線と、相手船の船首方位とがなす角度をいう。

 

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図5・8 相対速度のベクトルと真速度のベクトル

 

もし衝突の危険のある相手船があるときには、その他の船が新しい危険船にならないようにしながらその危険船を避けるという操船が必要になる。ARPAでは、そのような操船方法を見いだすための試行操船と呼ばれる操作ができなければならない。これは変針又は変速、あるいはその両方を操作者が仮に設定をして、その設定値による自船付近の未来の状況を表示面上で短時間に変化させてシミュレーションをすることである。もちろん、このシミュレーション中もARPAの正規の追跡などの動作は継続されていて、いつでも本来の表示に戻すことができなければならない。

以上がARPAの機能と動作の概要であるが、基本的には、レーダーの映像にプロッターを用い、他船の位置を3分〜6分の間隔でプロットすることによって他船の自船に対する航跡、すなわち、CPAとTCPAを知り、衝突の危険性の有無を判定することにある。このレーダーによる衝突回避のプロセスをチャート化したものが図5・9である。

 

 

 

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