5・3 変調回路と復調(検波)回路
無線で信号(通信内容)を送ろうとする場合には、信号を搬送波に乗せて電波として空中線から空中に放射する。搬送波は発振回路で得られる一定周波数の正弦波出力であって、これに信号を乗せることが変調という作業である。また、この搬送波に乗せられた信号を取り出す作業を復調又は検波という。
搬送波を変調する方式は信号波に従って搬送波の振幅を変化させる振幅変調、周波数を変化させる周波数変調及び位相を変化させる位相変調の3つの方式がある。
5・3・1 振幅変調(AM;Amplitude Modulation )
(1) 振幅変調の原理
一般に信号波を変調するのに搬送波と呼ばれる正弦波が必要で、変調波の周波数は搬送波周波数によって決められる。振幅変調は信号波に従って搬送波の振幅を変化させる変調方式であり、必要な周波数帯域が少なくて済み回路構成も比較的簡単なので古くから用いられてきたが雑音の影響を受けやすいという欠点を持つ。
いま搬送波をv=Vcos ωtとしかつ、簡単のため信号波をvp=Vpcos Ωtの単一正弦波とする。搬送波と信号波を図示すると図5・26(a)及び(b) のようになる。このときの変調波vmはvの振幅Vを信号波vpに従って変化させるので
vm=(V+Vpcos Ωt)cos ωt (5・18)
で与えられvmの波形は図5・26(c)のようになる。これから分かるように振幅変調波から元の信号波を再現するには振幅変調波の包絡線を取り出せばよい。次に式(5・18)を次のように変形する。
ただし、mは変調度と呼ばれVp/Vである。
式(5・19)よりvmの周波数スペクトルは図5・27のようになることが分かる。式(5・19)の右辺第1項は元の搬送波を、第2、第3項は信号波が変調された成分を表し、それぞれ上側帯波、下側帯波と呼ぶ。