第3章 マイクロ波回路
3・1 マイクロ波とは
電波の中のある周波数帯をマイクロ波というのは正式な呼称ではないが、一般的には数百MHzから数万MHzまでのUHF帯とSHF帯の電波をいい、波長でいえばデシメートル波帯からセンチメートル波帯までとするのが普通である。ただ、これらは正式に上限と下限を決められているのではなく、人によってその範囲に対する考え方も異なっている。例えば、その波長がミリメートル級のものはミリ波と呼んでマイクロ波と区別することが多いが、マイクロ波に含ませる場合もないわけでない。
マイクロ波が空中などを伝搬するときには、その波長が光に近づいているため、波動としての性質よりも、光に近い性質をより多く持ちあわせている。そのため、電波は直進して、あまり回折はしないので、その到達範囲は、見通し距離内を多くは出ない。また、金属面などでは光に近い反射をするので、パラボラ空中線などに用いられ、レーダーレフレクターもこの反射現象の応用である。
このようなマイクロ波の船舶での応用で最もよく知られているのがレーダーであって、そのほかにも、マイクロ波の各種のビーコンや、海事衛星通信などにも利用されている。このマイクロ波について、主としてレーダーに対する応用面から、この章ではその回路を、第7章ではその電子管について、第8章では空中線を、また、第9章ではその伝搬特性について述べることにする。
3・2 マイクロ波回路の特長
前の節でマイクロ波は光に近い性質をもっているとしたが、もともとは電波なので、波動としての性質も併せてもっているわけである。前章で述べたような回路にマイクロ波を通すと、その周波数が高いために、例えば抵抗素子のリード線のインダクタンスや巻線間のキャパシティを無視できなくなり、これらの抵抗やコイルなどを、それぞれの純粋の素子と考えられなくなってくる。そのため、マイクロ波にはそれに応じた新しい素子が使用されるようになる。
レーダーにおけるマイクロ波回路は、その空中線部分と空中線から送受信機までの給電部分及び、送受信機の高周波部分に使われているが、その回路は同軸管(同軸ケーブルとも称する。)と導波管とが中心となっている。