あとがき
世界の主要港湾の管理・運営の現状がどうなっているのか、とりわけ民営化の導入状況に注意をはらいながら整理を行った。調査は“世界の主要港湾”を対象にしてはいるが、本報告書の主たる関心は調査結果を開発途上国の港湾にどのように活かすかという点にあることはいうまでもない。
以上にみてきたような様々な港湾の管理・運営手法が、国や地域の開発にどのようなメリットやデメリットを生み出すか、また、経営の効率性からはどのように評価し得るか等を的確に論じるためには、具体的な港湾の成功・失敗の事例をさらに詳細に実証分析する必要があるだろう。本報告書はそのための材料を提供し得たものと考える。
しかし、我々の調査結果からは、少なくとも現時点でみる限り、管理・運営形態の両極に位置する公設・公営方式には官僚的硬直性や非効率が、また私設・私営方式には独占の発生や環境を無視した利益の追求等の問題が必然的に発生し、望ましい結果が見い出されないこと、そして更にこれらの問題の発生を最低限に抑制するために主な先進港湾では最もバランスのとれた公的部門のあり方が模索されている姿を読みとることができた。
これらの結果を港湾分野の今後の技術協力にあてはめて考えるとすれば、新古典派の主張する市場万能主義に基づくいわば「外科的療法」の開発協力には慎重でなければならず、途上国の公的部門の管理・運営能力の段階的な向上を組み込んだいわば「内科的療法」が最も望ましい方向であると考えられる。
(財)国際臨海開発研究センター