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4-2 港湾運営と組織改革

1) 小国の外交戦略

人口たかが270万人の小都市国家で、近隣諸国との関係がスムーズでない状態で独立したシンガポールは何の資源も持たず常にその存立基盤の脆弱で傷つきやすいといわれている。こうしたシンガポールは基本的な二つの外交戦略を打ち立てた。

一つは全方位外交で、できるだけ多くの大国をこの地域に引き入れ外資導入による近代工業化政策を推し進めたことである。もうひとつは、シンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、フィリピン、ブルネイの6ヵ国で構成されるASEANを中心とした外交方針である。「地域の独立、自由、中立」を掲げる反共グループであるASEANの近隣諸国との友好関係を推し進め、その中で主導的立場を確保することにより国際的な発言力を強めていこうとする戦略である。

 

2)港湾運営と組織改革

このような外交政策のなかで政府は産業基盤としてのシンガポール港に莫大な投資を展開してきた。その成果は確実に現れて、シンガポール経済の成長に大きな役割を演じている。シンガポール港はその圧倒的な地理的優位性からアジアの近隣諸港を凌駕し、香港につぐ世界第二位の港湾として成長した。しかしながら、近年急ピッチで追い上げる周辺諸国のコンテナターミナルとの競争を意識せざるを得ない状況になってきている。

このような中で、政府はシンガポール港を世界の海運センターとして発展させていくため、海運政策の頭脳となるMPAの設立、PSAの組織改革、民営化がすすめている。

 

 

 

 

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