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はじめに

 

(財)国際臨海開発研究センター(OCDI)では、平成8年度より3ヵ年にわたって世界の主要港湾(本調査ではコンテナターミナルを考察対象とする。)における管理・運営形態の動向について事例を調査してきた。そしてそれはまた同時に、港湾の商業的運営の進展状況とその課題について考えさせるものともなっている。

周知のとおり港湾の管理・運営における管理主体及び運営主体の民営化は今や世界的潮流になっている感がある。民間資金によってインフラを建設しあるいは整備するという方向性については、公的債務の削減、コストの削減、競争優位の確保等、先進国・開発途上国を問わず様々な契機が存在する。中南米諸国のように深刻な国家財政赤字及び国際収支赤字から生じた構造的な支払能力問題解決のための構造調整上、民営化が押し進められたケースもある。民営化に対する評価を現時点で下すのは時期尚早と考え、民営化に関する記述は事実関係の整理にとどめた。ただ、民営化の功と罪は明確にするよう心がけた。

本調査を通して目指したのは、開発途上国の臨海開発プロジェクトの実施に際して、

1) 港湾の管理・運営についての各種形態の実態的整理

2) それぞれの開発途上国に適した港湾の管理・運営形態を考える場合の各形態の利害得失を踏まえた整理

3) 民営化の形態の実態的整理と各形態の利害得失を踏まえた整理

を行うことによって、開発途上国における当該国の実情を踏まえた望ましい港湾管理・運営手法の選択肢を考察、提案する際に役に立つツールを提供することである。

しかしながら、社会・経済状況、歴史的発展度合い、港湾の立地等あらゆる面で異なる世界の各港湾を同一尺度で比較、類型化する作業は困難を極めた。まず、同じ国であってもそれぞれの港湾によって事情が異なる。また、現地調査を行っても国によっては資料入手が困難であったり、収集した資料についても国によって項目がまちまちで比較可能な調査項目の統一されたデータとして扱えないこともあった。国単位ではなく当該国の当該港湾を考察対象としたうえで、不明な箇所についてはOCDIでこれまでに手がけた開発調査等で入手したデータ、知見及び関連文献で補足せざるを得なかった。

ともあれ、本調査報告が開発途上国における望ましい港湾の管理・運営手法を検討する際の基本的枠組みをいくらかでも提供できれば幸いである。

最後に、3ヵ年の長きにわたり本調査の方向づけにつきご指導いただいた検討委員会の委員の方々、本調査にあたり資料提供を快諾していただいた各国の港湾管理者の方々に心より謝意を表する次第である。

 

平成11年3月

 

財団法人 国際臨海開発研究センター

理事長 廣田孝夫

 

 

 

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