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また、在宅の受給者側から出る批判は「要介護者との対話の時間が少なくなった」ということである。介護が時間単位の給付セットで測られることから、国家試験の資格を持った看護婦は値段が高くつくので、「お花の水はかえてはならぬ」、「赤信号には合わぬように」などのまじめな冗談まで出てきている。ノルトライン・ヴェストファーレン州では、在宅介護サービスの一時間の給付は約50マルクで、時給約75マルクも支払わねばならぬ看護婦は高くつくに違いない。しかし、一方には、時給6マルク位で、しかも国が払ってくれるチビル・ディーンスト(兵役免除の代替義務として障害者や高齢者のサービスに従事している青年)もあり、家事などの簡単な援助に便利である。但し1時間18マルク以上は使ってはならないという規制がある。ともかく、一時は理想とされた介護給付の50%は介護者の資格のあるものにせよ、という方針は暗黙のうちに撤廃された。図表34はノルトライン・ヴェストファーレン州の在宅介護サービスの給付項目、価格と時間を示している。ドイツではそれぞれの州で独自の給付水準がある。

<介護サービス従事者の評価>

この他に、介護サービス従事者(運営者)側からの批判や提案としては次のようなものがあった。

―メディカル・サービスの認定、とくにに格上げの申請の場合は、報告がくるまで時間がかかりすぎて、その間、認定なしでサービスをしなくてはならない。3-8週間であるが、それ以上かかることもある。

―介護補助具、例えば疾病金庫の担当下にある車椅子やゾンデなどの認可。

―疾病金庫の管轄下にあるはずの糖尿病の注射代を介護金庫に請求。

―介護金庫からの支払いが遅い。問い合せなども手紙を使っている。

―一生生懸命介護をして要介護者のリハビリにつとめればつとめるほど格下げになり、その結果給付が減るという矛盾。

―「痴呆性老人」のために「特別程度」を設けるべきだ。

―失業者を介護の分野にまわしたのは誤りだった。

―現金給付も悪くないが、麻薬患者が介護給付と年金めあてに介護する場合もあるし、母親が娘を強制したり、要介護者が虐待される場合もある。など

<医師等の評価>

次は医師による評価だが、ドイツでは「かかりつけ医」や「家庭医」の意見を要介護認定の場合に考慮しないので、高齢者を多く患者に持っている医師に、「あなたの意見を聞かれないで遺憾ではないか」と聞いたところ、彼の答えは「聞かれないで有難い。患者は普通、高い程度を要求する。もし私が低い程度しか認めないと、患者は他の医師に移ってしまう」ということであった。しかし、彼は、戦争経験者などで、いまだにモノをもらうのが恥ずかしく思ったり、遠慮がちな高齢者には進んでアドバイスを与えていると言っていた。

 

 

 

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