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2. ドイツにおける公的年金保険制度の動向

 

2.1 現状と課題

 

ドイツの高齢者の公的年金保障は、アメリカと同様に、所得ベースの年金制度を基本としている。図表18はアメリカ、日本とドイツの公的年金保険の特徴を比較したものである。公的年金保険の他に企業老齢保障、官吏恩給、そして個別的な高齢者の社会扶助(例えば生命保険など老後保障を現役時代に配慮しなかった者に対して与えられる生活扶助)がある。

国際的にみて、ドイツの公的年金保険制度は賦課方式のみに依存する保険制度であり、19世紀末のビスマルク時代に創設されたため、この方式を「ビスマルク・モデル」と呼ぶが、少子高齢化の今日では時代遅れになってきたという意見もあり、積立方式の「チリ・モデル」も参考にするべきだとする考えも広がりつつある。

上述図表18のように、ドイツの公的年金保険の被保険者は、毎月620マルク以上の所得のある者とされており、保険料率は労使折半で税込み所得の20.3%である。国家加算額は税控除の形をとり、約20%である。保険料算定限度は、8,400(旧西ドイツ)マルクである。保険年数45年で、退職後平均して税抜き所得の70%を給付される(図表19参照)。現在、退職年齢は男女とも65歳となっている。

1996年度の公的年金保険料収入は3,510億マルクであったが、支出はこれを越え3,580億マルクであった。

図表20は年金の平均受給額を旧東西ドイツ比で表わしているが、1995年から旧東ドイツの年金受給額が旧西ドイツのそれを抜いたのは興味深い状況である。また、旧西ドイツの高齢女性の年金額が低いのが目立つ。

人口高齢化にともなって、今後とも年金保険料率は増加することが予測されている。2030年までの予想として様々なものがあり、23.5%(Handelsblatt,1998720)になるとか、または、28-30%以上にまで上昇するともいわれている(Breyer参照)。図表21はドイツ銀行の推測だが、22.9%におさまっている。また、この図表ではアメリカと日本の保険料の趨勢も示されているので興味深い。

 

 

 

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